最新記事

南シナ海

インドネシア、EEZ内の違法漁船めぐり中国海警と緊迫 強硬姿勢の裏に国内政治対策も

2020年1月14日(火)18時50分
大塚智彦(PanAsiaNews)

インドネシアの海軍艦艇が南シナ海の自国EEZで中国海警の艦船と対峙した KOMPASTV / YouTube

<南シナ海での実効支配を強める中国に対し、自国の経済水域を守るべく武力衝突寸前まで対抗したインドネシア。その狙いは──>

南シナ海の南端部に位置するインドネシアのナツナ諸島周辺海域で2019年12月から違法操業していた中国漁船とそれに同行していた中国海警局の艦艇が1月13日までに排他的経済水域(EEZ)外へ退去したことが確認された。

同海域では中国が一方的に主張する「九段線」と、国際海洋法に基づくインドネシアのEEZが一部重複しており、中国漁船がEEZ内に侵入して不法操業するケースが多発している。今回はインドネシアが海軍艦艇や空軍戦闘機、治安要員を増派して厳しい対応を続けた結果、最終的に退去に追い込んだ。

このような断固とした対応の背景には、2019年10月に誕生したジョコ・ウィドド大統領第2期政権の領土・領海問題に関してはたとえ相手が中国といえども決して妥協しないという強い姿勢がある。

インドネシア抗議に中国は海警増派

12月19日と24日、中国漁船約60隻とそれを警護する中国海警局の艦艇2隻がリアウ諸島州ナツナ諸島北部海域に広がるインドネシアのEEZに侵入し、違法操業をしているのが確認された。

インドネシア政府は直ちに駐インドネシア中国大使に抗議するとともに直ちにEEZ外への退去を求めたが事態が動くことはなかった。

このためジョコ・ウィドド政権は同海域に海軍艦艇8隻、空軍戦闘機4機、兵士や治安要員600人を増派、退去要求と警戒警備行動に着手した。

中国海警局の艦艇は最終的に6隻に増強され、それに守られる形で中国漁船は漁網を海中に展開して底引き網による漁獲を続けていたという。このため違法操業の中止を求めるインドネシア側との間で双方の艦艇が接近するなど緊張状態が続いていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中