最新記事

動物

インドネシアで新種の鳥、1度に10種も発見 19世紀の探検家がやり残した地域調査で成果

2020年1月22日(水)19時10分
大塚智彦(PanAsiaNews)

今回発見された新しい亜種の鳥のひとつ、トギアンヒメアオヒタキ CNA / YouTube

<瑠璃色の羽や、美しいさえずりの野鳥たち。熱帯のジャングルには人間がまだ知らない生命にあふれている──>

インドネシアの離島で鳥類の新種と亜種の合計10種が発見されたことが1月10日付けの国際的な学術誌「サイエンス」で報告された。ナショナル・ジオグラフィックが伝えたところによるとシンガポール国立大学(NUS)の鳥類専門の研究者フランク・ライント教授らが、スラウェシ島の東にあるマルク海にあるタリアブ島、トロ湾外縁のペレン島、北部トミニ湾に浮かぶバドゥダガ島の3島を対象として調査した結果、昆虫を食べる小さな鳴き鳥の「ペレンメボソムシクイ」「タリアブメボソムシクイ」、驚くと尾羽を扇形に広げるオウギビタキ属の「ペレンオウギビタギ」、花の蜜や果実を食べるミツスイ属の「タリアブミツスイ」、さらに「タリアブセンニュウ」「ドギアンヒメアオヒタキ」」などの新たな鳥類を発見、確認したという。

NUSの専門家によると、今回新種の鳥類が見つかった島はいずれも英国の探検家アルフレッド・ウォレスが1854~62年にかけて東南アジア一帯を調査研究のために踏破した際、あまり調査に時間をかけなかったことや深海に周囲を囲まれており氷河期も他の陸地と繋がっていなかったとみられる自然環境から、固有で未発見の鳥類が存在する可能性が高いと狙いをつけて調査を行い、成果を上げたという。

生物の多様性を示すウォレス線

19世紀にウォレスが行った調査研究では、インドネシアのバリ島=ロンボク島間のロンボク海峡からスラウェシ島=カリマンタン島間のマカッサル海峡を経て南北に延びる海上を境界として東西で生物分布に大きな違いがあることがわかり、これは現在ウォレス線と呼ばれている。

さらにオーストラリアの北側に位置するティモール島の東側からバンダ海のブル島、ハルマヘラ島の西にかけてのバンダ海、モルッカ海を通って太平洋に抜ける海域にかけては主に貝類や哺乳類の分布が東西で異なるウェーバー線というものも存在する。

ウェーバー線は動物学者マックス・ウェーバー氏が1902年に提唱したものでウォレス線と並んで、インドネシア国内に生物分布の「境界」となる線が2種類も存在することになる。

これがインドネシアの生物の多様性を特徴づけるものとなっており、これまで多くの内外の学者、研究者、探検家を魅了し続けてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 2
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 7
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 8
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 7
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 8
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中