最新記事

感染症

1月だけで死者115人、デング熱大流行の兆し インドネシア、非常事態宣言も

2019年1月31日(木)12時42分
大塚智彦(PanAsiaNews)

デング熱に感染して手当を受ける赤ちゃん Beawiharta Beawiharta / REUTERS

<寒波とともにインフルエンザが流行する日本と対照的に、熱帯のインドネシアでは雨期になってデング熱の感染者が急増している>

インドネシアではこの2019年1月だけでこれまでに100人以上が死亡するなど、熱帯・亜熱帯の感染症デング熱が流行の兆しを見せている。インドネシア保健省は国民に警戒を呼びかけているが、2、3月にはさらに感染が拡大する可能性もあり、対策が急務となっている。

保健省が1月29日に公表したデング熱感染に関する最新情報によると、1月1日から28日までの間に発生したデング熱の感染件数は1万2000件で、死者は115人にのぼっているという。これは2018年1月の感染6000件、死者25人を大きく上回っており、流行の兆しをみせているという。

これまでに死者が出ているのは16の州で、最も多いのが東ジャワ州の41人、北スラウェシ州の13人、東ヌサテンガラ州の12人などとなっている。

こうした全国での感染者急増の事態を受けて、保健当局は東ヌサテンガラ州クパンと西マンガライ県、中部カリマンタン州カブアス県、北スラウェシ州で「デング熱非常事態宣言」を発令して特に警戒を呼びかけている。

雨期の水溜りで発生する蚊に注意

デング熱は熱帯や亜熱帯でヒトスジシマカやネッタイシマカという蚊が人を刺すことによって感染するデングウィルスによる感染症で、潜伏期間は3~7日間。発症すると高熱や頭痛、関節痛、発疹などの症状がでるとされる。数日の発熱期間を過ぎると自然に治るが、まれに治癒せずにデング出血熱を発症、重篤になる場合もあるという。

感染源となる蚊は、雨期にできる水溜りなどでメスが一度に数百個産卵し、約2日で羽化するとされる。活動が活発になるのは午前10時から午後3時の間とされ、小中学生が学校で刺される事例が多く起きているという。

一説ではデング熱を媒介する蚊は3年ごとに異常発生する周期があるとされ、2019年はその異常発生にあたる年とされ、特に警戒が必要といわれている。

デング熱にはワクチンや治療薬はなく、症状に応じた対症療法しかない。自衛策としては長袖、長ズボンを着用してできる限り肌の露出を避けることのほか、特に外出時には市販の防虫スプレーなどで予防することが必要という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

台湾鴻海、第4四半期利益は13%減 予想下回る

ワールド

トルコは安全保障のパートナー=ゼレンスキー氏

ビジネス

アジアのヘッジファンド、株安でも健闘 中国株が寄与

ビジネス

日経平均は反発、円安好感し戻り歩調 後半は小動き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 4
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 5
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 8
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 9
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎…
  • 10
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中