ピアニスト角野隼斗の音を作る、調律師の知られざる世界...「かてぃんピアノ」はこうして生まれた
BEHIND EVERY NOTE

「かてぃんピアノ」(左)の仕掛けにも関わる按田泰司 TORU YAGUCHI FOR NEWSWEEK JAPAN
<スタインウェイ・コンサートテクニシャンの按田泰司に聞く、角野隼斗の素顔とあのピアノの誕生秘話>
黒子的な役割ながら、ピアノを使用するコンサートに欠かせないのが調律師の存在だ。角野隼斗が使用するピアノの調律を5年前から担当する按田泰司(あんだ・たいじ)は、アップライトピアノに施す角野独自の仕掛けにも関わり、音作りにも一役買う。
スタインウェイ・コンサートテクニシャンでもある按田に、調律師の知られざる仕事とピアニスト角野隼斗について語ってもらった。【聞き手/構成:田澤映(ジャーナリスト)】
高校を卒業して調律師の養成所に入り、その後ずっとピアノ調律の仕事を続けています。角野さんとは、2019年末のリサイタルでご一緒したのがスタートです。それ以来、国内ツアーや主要国内公演の多くに帯同しています。
ツアーに入ると、音響さんたちスタッフと、一緒に全国を巡回していきます。今は1年間を通して、1割くらいは角野さんとの仕事になっていると思います。
角野さんが『ショパン国際ピアノ・コンクール』から戻ってこられて自宅のピアノの調律に伺うと、「アップライトピアノが欲しいんです」とおっしゃる。弦とハンマーの間にマフラーフェルトを挟んでソフトな音を出したい。
角野さんの希望に応えるため、ピアノ自体の調整をした上で、フェルトを何度も張り替えて、角野さんに動画を送りました。