「政権打倒は叫ばない」ジャマル・カショギ独占インタビュー
IN HIS OWN WORDS
著名なジャーナリストが自分の意見を語ったという「罪」で残忍な処刑を受けた後も、アメリカではサウジ政府の責任論を回避しようとする動きが根強い。しかし、国際会議をキャンセルしたり、武器輸出の契約をいくつか停止するだけでは不十分だ。
米財務省はサウジアラビアに広範な制裁を科すべきだ。ムハンマドを政権から去らせるべきだ。ムハンマドだけでなく、彼が最たる象徴である君主制の暴政そのものを終わりにするべきだ。
国際社会がムハンマドに圧力をかけて、無慈悲な指導者からサウジ国民を守ることができるだろうか。そう尋ねるとジャマルは言った。
それが唯一の希望だ、と。
全ての人に今、彼が語る希望に耳を傾けてほしい。
――ムハンマドが主張する改革とは何か。彼はイスラム教そのものを改革しようとしているのだろうか。
目新しいことを言っているわけではない。映画館を建てるか、あるいは霊廟の礼拝を解禁したいとムハンマドが言えば、イスラム法学者はまず前者を選ぶ。後者は(サウジアラビアが国教とする復古主義の)ワッハーブ派にとってあり得ないことだ。
ムハンマドの改革はワッハーブ派の改革であって、イスラムの改革ではない。その区別は重要だ。
――本当にワッハーブ派を改革しようとしているのか、見掛けだけの改革にすぎないのだろうか。
彼は本気だ。宗教警察の権限の縮小はまさに改革で、筋金入りのワッハーブ派には受け入れ難い。映画館やエンターテインメント、音楽、女性のベールなど、ムハンマドは社会で生きる人々に直結する問題に取り組んでいる。
司法制度は重要な改革であり、社会と貿易もその恩恵を受けるだろう。イスラム思想の多様性と司法は、どちらも重要な改革だ。この2つを実行できるなら、私は彼を改革者と認めよう。
――もし彼が司法改革を行い、イスラムの多様性を認めたら......。
イスラムは多様な宗教だ。そこは重要だ。ワッハーブ派の核心を成す原則は多様性を認めないこと。ワッハーブ派は真理の所有者、唯一の所有者を自任している。そのために他のあらゆる宗派と対立することになる。
――サウジアラビアでは女性はさまざまな法律で男性の保護下に置かれているが、これらの法律を撤廃する真の司法改革が必要ではないか。これらの法律はイスラム法に基づくものではない。イスラム法では自分の意思で結婚するなど女性の権利が認められている。
女性の問題はもちろん重要だが、司法改革をそれだけに矮小化してはいけない。建国の父アブドル・アジズの時代からサウド家は成文法の制定を拒んできた。成文法は世俗的だと。私の言う改革は成文法の制定だ。手続きを踏んだ裁判が行われ、(成文法に基づいて)裁判官が判決を下すようにする......それこそが必要な改革だ。