「政権打倒は叫ばない」ジャマル・カショギ独占インタビュー
IN HIS OWN WORDS
――ムハンマドは王族など多数の有力者を逮捕し、リッツ・カールトンに監禁した。汚職容疑が事実なら逮捕は当然だが、まともな司法手続きは取られず、証拠もなく、透明性はゼロだ。
ムハンマドにはそんな発想はないだろう。彼は今でも......心の奥深くでは、昔ながらの部族の長なのだ。例えばクウェートは湾岸諸国の仲間であり、社会はサウジアラビアとよく似ているが、司法制度ははるかに進んでいる。はるかに透明性が高い。
ムハンマドはなぜ司法改革の必要性を認めないか。それをやれば、彼の専制支配が制限されるからだ。私は時々感じるのだが......彼は先進国の豊かさや高度な技術、シリコンバレーや映画館といったものを享受しつつ、その一方で祖父と同じやり方で国を治めたいと思っているのではないか。
――その2つは両立しないのでは?
彼は両立させたいと思っている。
――そこが分からない。両立するのか。
まず言えるのは、サウジアラビアには彼に圧力をかけるような政治運動が全くないこと。それが第1だ。加えて、世界は彼に満足している。アメリカでは、バーニー・サンダース(上院議員)を除いて、ムハンマドに圧力をかけろと言っている政治家がいるだろうか。誰もいない。
――でも、ジャマル、思い出してほしい。2004年にも改革者と呼ばれる人がいた。それはバシャル・アサド。84年にもいた。サダム・フセイン。ちなみに彼らを改革者と呼んでいたのはアメリカ人だ。
そのとおり。だがアメリカ人が気に掛けるだろうか......リッツ・カールトンにいる150人か400人のサウジ人がどんな扱いを受けようと。これは断言できる。サウジアラビアで真の危機が起きない限り、アメリカ人はムハンマドに圧力をかけないだろう。
――あるいはアメリカで9・11テロのような危機が起きない限り?
そう。ああいった危機だ。そうなればアメリカもサウジアラビアに目を向けるだろう。
――トランプ政権下ではそうであっても、アメリカは短期間で変わる。特に若い世代はサウジアラビアが実施する政策を注意深く見守っている。ムハンマドの政策がどこかでつまずけば、アメリカの姿勢は変わるのではないか。アメリカ人はムハンマドの正体を見極めているのか。全面的に支持してもいい人間なのか。
確かに......裏目に出る可能性はある。彼は自分に絶大な自信を持っている。自分以外の人間を全く信用しない。まともな顧問もいない。自分の望むサウジアラビアに、自分の構想どおりの国にしようとしている。
【参考記事】カショギ惨殺事件がワシントンの話題を独占する4つの理由
※本誌11/6号(10/30発売)「サウジ、血の代償」特集はこちらからお買い求めになれます。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら