米トルコ間の大人のケンカが市場の危機に
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安全保障上のリスク
トルコはNATO加盟国であり、いわば「西側同盟」の南側を守る要衝だ。そのトルコに厳しい態度を取れば、アメリカ自身の首を絞めることになりかねないと専門家は指摘する。
例えば、トルコ南部のインジルリク空軍基地は、隣国シリアでアメリカが展開するテロ組織ISIS(自称イスラム国)掃討作戦の重要な拠点となってきたし、B61核爆弾の備蓄場所として、ヨーロッパの核抑止力の要にもなっている。
トルコはその地理的位置付けゆえに、シリア経由で地中海への進出を図るロシアに対しても特別な影響力を持つ。「トルコは地理的に計り知れないほど貴重な位置にある」と、レキシントン研究所のローレン・トンプソンは語る。「これは米政府にとって根本的な問題だ」
トランプは制裁の一環として、トルコに対するF35戦闘機の売却を凍結したが、それはこの地域におけるアメリカ自身の立場を複雑化させる恐れがある。
トルコは近年、アメリカの戦略上のライバルであるイランとロシアに接近してきた。エルドアンはニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で、アメリカがトルコの懸念に対処しないなら、「新たな友人や同盟国を探し始め」なければならないと警告を発した。
これを「はったりだ」と切り捨てる声もあるが、トルコと欧米諸国の決裂は不可避とみる専門家もいる。トルコの元国会議員で、現在はアメリカのシンクタンクに所属するアイカン・エルデミシュによると、アメリカとトルコの対立は牧師解放をめぐる問題よりもはるかに深刻だ。「エルドアンはしばらく前から、米欧同盟から距離を置き、ロシアとイランに接近している。トルコとNATOの関係が危機に陥るのは時間の問題だ」
アトランティック・カウンシルのスタインの見解はちょっと違う。トルコにとってNATOの一員であることは非常に重要だというのだ。「トルコはNATOを離れたくないはずだ」
似た者同士のリーダー
強烈なエゴイストで、比較的マイナーな問題も大騒ぎに発展させる傾向があるという意味で、トランプとエルドアンは似た者同士の大統領だ。変なところでプライドの高い2人が対立しているために、ブランソンの解放は通常の外交問題よりも厄介な問題に発展している。
トランプは7月のNATO首脳会議でエルドアンに会ったとき合意が成立したと思ったらしい。イスラエルで拘束されているトルコ人女性の解放をトランプが取り計らい、トルコはブランソンを解放するという取引(ディール)だ。
ところがトルコ人女性が解放されても、ブランソンの自宅軟禁は続いた。激怒したトランプはトルコに対する追加関税をツイッターで発表。トルコリラは「非常に強いドルに対して急落するだろう!」と言い放った。
国務省のナウアートは8月14日、ブランソン解放に向けた交渉は続いていると述べた。だが2人の頑固者リーダーが、ここまで派手な騒ぎに発展した問題で、振り上げたこぶしを簡単に下ろすかどうか。世界中の市場は当面、はらはらしながら展開を見守ることになりそうだ。
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