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日銀、追加利上げ先送りの可能性 米関税巡る不透明感で=IMF高官

2025年04月24日(木)09時57分

国際通貨基金(IMF)のアジア太平洋局副局長・日本担当ミッション・チーフ、ナダ・シュエイリ氏は4月23日、米国の関税政策による不透明感で経済成長とインフレの下振れリスクが高まっているため、日銀は追加利下げの時期を先送りする可能性が高いとの見方を示した。1月23日、都内で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

[ワシントン 23日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)のアジア太平洋局副局長・日本担当ミッション・チーフ、ナダ・シュエイリ氏は23日、米国の関税政策による不透明感で経済成長とインフレの下振れリスクが高まっているため、日銀は追加利下げの時期を先送りする可能性が高いとの見方を示した。

ロイターとのインタビューで、米関税と他国の対応を巡る大きな不確実性を受けて企業景況感が悪化し、一部の企業が賃上げを継続する意欲を失う可能性があると述べた。

IMFは引き続きインフレが日銀の2%目標に収束すると予想しているが、その時期は従来予想の2026年ではなく27年にずれ込むと予想した。

「多くの企業は現在、投資計画を実行せず、見通しが明確になるまで様子見している可能性が高い」と指摘。「われわれの参照シナリオが現実になれば、日銀の利上げ時期は後ろ倒しになるとみている」とし、「成長が鈍化するシナリオでは、金融緩和をより長期間維持する必要があるかもしれない」と述べた。

ロイターが23日公表したエコノミスト調査では、市場の日銀利上げ予想が従来より後ずれした。6月まで金利を据え置き、第3・四半期に25ベーシスポイント(bp)の利上げを予想する回答者が過半数をわずかに上回った。

IMFは22日に公表した「世界経済見通し」で、今年と来年の日本の成長率見通しをともに0.6%とし、従来からそれぞれ0.5ポイントと0.2ポイント引き下げた。

シュエイリ氏は、米関税引き上げによる世界的な不確実性で消費が冷え込み、企業が来年の賃金交渉で大幅な賃上げを維持する意欲が失われる恐れがある中、「リスクのバランスは成長とインフレにとって下向きだ」と述べた。

日銀は1月に政策金利を0.5%に引き上げた。植田和男総裁は利上げを続ける用意があると示唆しているものの、トランプ米大統領の関税政策で利上げの時期と幅の決定は複雑化している。

日銀が利上げではなく利下げを検討するのはどういう状況かとの質問に、シュエイリ氏は「国内需要に大きなショックが起こり、持続可能な2%のインフレ達成の可能性が脅かされる場合、そのリスクに対抗するには金融緩和のレベルを引き上げる必要があるかもしれない」と話した。

<安全通貨>

トランプ米大統領は日本に24%の相互関税を課したが、他の関税措置と同様に7月上旬まで一時停止されている。一方、一律10%の関税と自動車への25%の関税は維持され、日本経済への打撃となることが予想される。

石破首相は22日、ガソリン価格の引き下げと電気料金抑制のための補助金支給の計画を発表した。一部の議員からは、家計の負担軽減のため、一時的な消費税減税を求める声も上がっている。

シュエイリ氏は、そうした支出や減税は財政再建を困難にするものとして反対の考えを示した。

「関税で経済が大きな打撃を受けるのであれば、何らかの支援が必要になるかもしれない。しかし支援は期限を定め、対象を絞り込む必要がある」と述べた。

日本は巨額の公的債務抑制のため、中期的にはいずれ消費税率の引き上げを余儀無くされると指摘。「もし現時点で減税すれば、後々必要となる努力はより大きくなり、助けにはならないだろう」と述べた。

また最近対ドルで上昇した円については「経済の強さ、そして経済の予測可能性と安定性を考えると、依然として安全通貨だ」と付け加えた。

「当局は柔軟な為替相場制度の維持に尽力している。これは国にとって有益で、衝撃の吸収にも役立つ」と評価。「われわれは当局のコミットメントを支持するし、経済の調整にも役立つと考えている」と語った。

ロイター
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