希少な新種オランウータンの双子発見! インドネシア・スマトラ島で
タパヌリ・オランウータンは新種
今回双子が確認されたタパヌリ地域はトバ湖南側に広がる広大な密林地域で2017年11月に新種のオランウータンとして報告された「タパヌリ・オランウータン」の生息地域。2013年に同地域で見つかったオランウータンの遺骸などから採取した2頭分のDNA検査の結果から、これまでのスマトラ・オランウータン、ボルネオ・オランウータンとは異なる新種であると国際研究チームが報告、「タパヌリ・オランウータン」と命名された。
同チームによると「タパヌリ・オランウータン」はその個体数が約800とオランウータンの中でも最も絶滅の危機に瀕しているという。
新種発見については2017年11月6日掲載の「新種のオランウータンを密猟と環境破壊から守れ」で報告しているが、最近同地区近くで中国資本による水力発電所の開発計画が進行中で、オランウータンの生息環境への深刻な影響が懸念されている。
環境保護で個体保護との訴え
SOCPの生物多様性観察グループのマシュー・ノウィック代表は地元紙に対して「タパヌリ地区の密林には環境破壊が迫っており、タパヌリ・オランウータンの保護こそが今課せられた使命であり、あらゆる環境破壊の動きに適切に行動したい」と危機感を表明、州政府や中央政府に対し積極的な環境保護を訴えている。
また別のオランウータン保護団体では「双子が確認されたことは、絶滅の危機に瀕しているだけにうれしいニュースであり、さらにそれぞれの個体の保護と環境保護を進めるべきだ」としている。
2017年11月の新種タパヌリ・オランウータン確認の際はインドネシア中、そして世界がそのニュースに注目した。しかしその後約8カ月、たまに取り上げられるオランウータンのニュースは「ボルネオ島のオランウータン、16年で半数以下に(2018年2月)」「動物園来園者が投げた煙草を吹かすオランウータン(2018年3月)」「西カリマンタン州でペットとして飼われていたオランウータンの子供2頭を保護団体が救出(同年同月)」など芳しくないものばかりなのが現実だ。
SOCPなどでは世界的にも希少な「オランウータンの双子誕生」のニュースがさらに国際社会やインドネシア国内でのオランウータン保護運動に対する関心を高め、本格的な環境保護運動に結びつくことを希望している。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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