ICC、フィリピン前大統領を人道に対する罪で逮捕 ハーグに移送

フィリピン警察は11日、マニラの空港に到着したドゥテルテ前大統領(写真)に対し、国際刑事裁判所(ICC)が発布した逮捕状を執行し、同氏を拘束した。サンフアンで2月撮影(2025年 ロイター/Eloisa Lopez)
[マニラ 11日 ロイター] - 国際刑事裁判所(ICC)は11日、フィリピンのドゥテルテ前大統領に対し、「麻薬戦争」と呼ばれる強力な薬物犯罪対策実施中に犯した人道に対する罪で逮捕状を発行したことを確認した。
マルコス大統領によると、ドゥテルテ氏はマニラからハーグに向けて出国した。
これより先、フィリピン政府はドゥテルテ前大統領に対しICCが発布した逮捕状を警察が執行したと発表していた。
マルコス大統領は記者会見で、前大統領がオランダに向けて出国したことを認め、「逮捕は適切かつ正しく、必要な法的手続きをすべて踏んだものだと確信している」と述べた。また、逮捕は国際刑事警察機構(インターポール、ICPO)の指示に従って行われたとした。
ドゥテルテ氏は滞在先の香港からマニラの空港に到着したところを逮捕された。同氏は10日、ICCが逮捕状を発布すれば逮捕に応じると述べていた。
ドゥテルテ前政権の「麻薬戦争」中には、多くの容疑者が超法規的に殺害されたとされる。
ロイターが確認した逮捕状によると、前大統領は南部ダバオ市長を務めていた時期も含め2011ー19年に少なくとも43人を殺害した。
ドゥテルテ氏の娘ベロニカさんはインスタグラムで父親は飛行機に搭乗したが、家族には行き先は知らされていなかったと述べ、「父を誘拐した飛行機が数分前に出発した」と投稿した。
ベロニカさんが投稿した動画によると、ドゥテルテ氏は拘束されているマニラのビラモール空軍基地で「法律とは何か、私が犯した罪とは何か」と発言。
「私がここに連れてこられたのは、自分の意思ではなく、誰かの意思によるものだ。あなたは今、自由の剥奪について答えなければならない」と述べた。同氏が誰を念頭に発言したかは不明。
ドゥテルテ氏はICCが違法薬物の取り締まりを巡る予備調査を開始したことを受けて、2019年にフィリピンのICC脱退を決めた。フィリピン政府は昨年まで捜査への協力を拒否していた。
警察によると、薬物犯罪対策では容疑者6200人が殺害されたが、人権団体は実際の犠牲者ははるかに多く、実態が隠ぺいされていると主張している。
ドゥテルテ氏の元法律顧問サルバドール・パネロ氏は、逮捕は違法だと主張。警察は空港で弁護士がドゥテルテ氏に面会するのを許可しなかったと述べた。ICCに管轄権はないとの認識も示した。
人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは「(逮捕は)説明責任に向けた重要な一歩」とし、ドゥテルテ氏の身柄を速やかにICCに引き渡すべきだと主張。「今回の逮捕で犠牲者と遺族は正義に近づき、誰も法の裁きから逃れられないという明確なメッセージが発せられるだろう」と表明した。