最新記事

自然

希少な新種オランウータンの双子発見! インドネシア・スマトラ島で

2018年7月16日(月)08時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

昨年、新種として確認されたタパヌリ・オランウータン FRANCE 24 English / YouTube

<昨年、新種発見の報道で注目を集めたインドネシアのオランウータン。今度はその新種に双子を連れた母親が目撃されたが、彼らを取り巻く状況は悪化する一方だ>

インドネシア・スマトラ島北部の北スマトラ州南西部のタパヌリの密林内で、同地域にだけ生息する「タパヌリ・オランウータン」の雌が双子の赤ちゃんと一緒に行動していることが確認された。人に最も近い類人猿であるオランウータンが双子を出産するのは極めて珍しく、世界的にもこれまでも数例しか報告されていない。

同地域周辺では中国の資金援助で水力発電所の開発計画が進むなど絶滅の危機に瀕したオランウータンの生活環境破壊の懸念が高まっており、インドネシアや国際的な環境保護団体などが「タパヌリ・オランウータンの種を保護するためには早急なその生息地域の自然環境保護が必要不可欠である」と訴える事態になっている。

観察者が母と双子を目撃

タパヌリ地区に広がる広大な密林には「スマトラ・オランウータン保護計画(SOCP)」が設置した観察拠点があり、2018年5月20日午後2時半ごろと同日午後3時40分ごろの2回に渡ってバンタン・トル観察拠点の観察員2人が双子の赤ちゃんと母親を確認したという。

確認したのはバンタン・トルの観察拠点から北西に約1キロの地点で、観察員2人が2頭の赤ちゃんを抱いている母親オランウータンを発見した。1回は樹高約15メートルの木上にいたところだったという。

母親は体の左右に赤ちゃんをぶら下げる形で木から木へと移動しており、2頭の赤ちゃんは観察員によると「顔がとても似ており、大きさも同じ」であることやオランウータンの母親が自分の子ども以外と行動を共にすることがまずないことなどから2頭が双子であるのは間違いないという。

双子を発見した観察員は「赤ちゃんは双子で、1頭はとても物静かでもう1頭は活発という違いがあるが、常に母親にしがみついて行動を共にしている」とインドネシアの雑誌「テンポ」の取材に答えている。

オランウータンが双子を出産した例は、動物園では1968年に米シアトルのウッドランドパーク動物園で飼育中のオランウータンが双子を産んだ例や、2011年7月に香港動植物公園でボルネオ・オランウータンが雄雌1頭ずつの双子を出産した記録がある。野生のものでは2007年にマレーシアサバ州キナバタンガン川流域で発見したとの報告や、2010年1月にスマトラ島最北部アチェ州アチェ・ブサール県ジャントの保護林内で雄雌の双子が生まれたなど、確認された例は少なく、非常に稀なケースとされている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中