米エネルギー長官、戦略石油備蓄の放出停止検討

3月10日、米エネルギー長官のクリス・ライト氏(写真)は戦略石油備蓄の放出計画停止を検討していることを表明した。既存備蓄の減少を要因に挙げ、水準回復に向けて買い付け費用などで議会の協力を得たい意向。テキサス州ヒューストンで開幕したCERAウィーク2025で撮影(2025年 ロイター/Kaylee Greenlee)
Timothy Gardner Jarrett Renshaw
[ヒューストン 10日 ロイター] - 米エネルギー長官のクリス・ライト氏は10日、戦略石油備蓄の放出計画停止を検討していることを表明した。既存備蓄の減少を要因に挙げ、水準回復に向けて買い付け費用などで議会の協力を得たい意向だ。
南部テキサス州ヒューストンで10日開幕したエネルギー業界の国際会議「CERAウィーク2025」にライト長官が出席し、ロイターのインタビューに応じた。
米国には世界最大の戦略石油備蓄がある。ただライト長官によると、バイデン前政権がロシアのウクライナ侵攻を受けて過去最大の約3億バレルを民間に販売したため、従来の備蓄水準に戻すには5~7年かかり、買い付けには200億ドル必要という。議会に対して一度に200億ドルの支出は求めない方針だ。
議会では2026年から31年までに計約1億バレルを民間に売却すると決定済みだが、ライト長官は「備蓄量を回復するには売却よりも時間を要する」と指摘。その上で「議会と協力して取り組むのは何事も困難が伴い、時間もかかるが、やり遂げたい」と述べた。
またライト長官は、トランプ大統領が掲げる天然ガスの積極輸出方針に言及した。日本や韓国などが参加に期待を寄せる440億ドル規模の大規模天然ガスパイプライン建設計画(アラスカLNG)では、実現に向け米政府が外交で取り上げることを検討していると明らかにした。
ライト長官によると、アラスカLNGを巡ってはエネルギープロジェクトの公的融資保証などを手がける同省所管の「ローン・プログラム・オフィス」(LPO)活用を含めて幅広い支援策の検討も進んでいる。LPOが活用できればプロジェクトは低金利で資金調達が可能となる見通しだ。LPOはバイデン前大統領が盛んに活用し、財政支援は数千億ドル規模に膨らんだ。トランプ大統領は1期目では活用が限定的だった。ただ、2期目就任初日にエネルギー国家非常事態を宣言し、発電所やパイプライン、送電網など大規模プロジェクトの迅速整備を打ち出している。