最新記事

英王室

結婚式はハリー王子の「禊」 呪縛を解き放ったメーガンの「操縦術」がすごい!

2018年5月21日(月)16時00分
有元えり

慈善活動、そして「運命の女性」メーガン・マークルとの出会い

その後のハリー王子は、かつてのダイアナ妃のように、慈善活動に熱心に力を注ぐようになった。地雷や不発弾の撤去活動、HIV感染に対する正しい知識の啓蒙活動、ウィリアム王子と立ち上げたチャリティ財団「ロイヤル・ファウンデーション」、そして傷病兵による国際スポーツイベント「インビクタス・ゲーム」など、さまざまな活動を支援することで、再び人生の意義を見出したかのように見える。

そんなハリーに一筋の光が差し込んだのは、2016年の夏だった。マークルとは、共通の友人が企画してくれたブラインドデートで出会い、その場で意気投合。瞬く間に交際に発展する。

meghan-harry-g02.jpg
Alexi Lubomirski


「美しい人が、僕の人生に転がり込んできたのです」

「彼女とは信じられないほど、すぐに恋に落ちました。ついに運命の人と巡り会えたのです。すべてが完璧だった」

「この美しい女性は僕の人生となり、僕は彼女の人生となった」

後の婚約会見のインタビューで、ハリーは出会いについてそう述懐している

人道支援や慈善活動をライフワークとするマークルは、自分の考えをしっかりと持ち、母ダイアナ妃の面影が被る。なにより、王室の人間に対しても臆せず接するマークルと一緒にいると、素の自分になれる。魂の片割れがようやく見つかった。王子はそう確信したのだろう。実際、マークルは歴代の彼女と違って、脚光を浴びることには慣れているプロの女優である。王子にとって、まさに「完璧」だったのだ。

出会って4週間後の8月、王子はマークルを旅行に誘い、2人はアフリカ・ボツワナ共和国の星空の下、キャンプをして5日間を過ごした。

「彼女と2人だけの時間を過ごして、お互いに対する理解を深めたのです」

ボツワナ共和国は、母を亡くした悲しみを癒すために、父が息子たちを英国から脱出させて連れて行った思い出深い地である。「第二の故郷」と王子自ら公言している特別な場所で、マークルへの愛は不動のものとなった。

【参考記事】「肥だめ」よりひどい?メーガン・マークルに対する英右派の差別発言

新しい王室像を切り開くことを使命に

そして2017年の11月、ハリーはマークルにプロポーズする。初デートから婚約発表まで1年半。世間はスピード婚約ととらえても、ふたりに時間は関係なかった。婚約会見でマークルと手をつないでインタビューを受けるハリーの眼差しはあたたかく、いつになくリラックスしていたのが見て取れた。

母ダイアナ妃が亡くなってから20年が経過し、ようやくハリー王子は心の拠り所を見つけたのだ。マークルとの出会い以降、王子には落ち着きと風格が備わり、過去のトラウマにも堂々と向き合って発言している。1人の人間として成熟した33歳の今が、結婚するにふさわしいタイミングだったのだろう。

今後はメーガン妃と手を取り、開かれた新しい王室像を打ち立てることを目指すというハリー。事実、結婚式は英国の伝統に、アフリカ系アメリカ人というルーツを持つメーガン妃の背景に合わせた演出が盛り込まれ、異例尽くしのものになっていた。

王室に新しい風を吹き起こそうとするハリーの人生の第二章は、始まったばかりだ。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国テンセント、第1四半期は予想上回る6%増収 広

ワールド

ロシア大統領府人事、プーチン氏側近パトルシェフ氏を

ビジネス

米4月卸売物価、前月比+0.5%で予想以上に加速 

ビジネス

米関税引き上げ、中国が強い不満表明 「断固とした措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 7

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中