中国の滴滴、宿敵ウーバー独占市場へ参入 剛腕手法は受け入れられるか
リンクトインのプロフィールを検証したところ、マー氏をはじめとするディディ陣営は、業務、ロジスティクス、戦略、マーケティング、運転手研修といった経験を有するウーバーのマネジャーや専門家を、これまでに少なくとも5人、メキシコで採用している。
マー氏はコメントを拒否している。
滴滴出行の戦略に詳しい関係者によれば、まだ運転手の募集を開始しておらず、最初にどの都市に参入するかはっきりしないという。
同関係者によれば、滴滴出行は価格面での競争だけでなく、安全運転やレスポンスタイムの短さなどを売りにしていく計画だという。同社では、どこに配車するべきかを15分前に予測するための支援アルゴリズムを開発済みだ。
また滴滴出行は、メキシコで自転車やスクーター、オートバイのシェアリングサービスの提供することも検討している。これに対して、ウーバーはまだ配車サービスだけに固執している。多様な交通手段の提供は、同社が中国市場で優位を築くうえで有効だった。
だが、中国市場とメキシコ市場の最大の違いは、現金決済という点かもしれない。上記の関係者によれば、滴滴出行は運転手を保護するためにメキシコ市場で現金での料金徴収を扱わない予定だ。
一方、ウーバーは、銀行口座を持たない人が数千万人もいるこの地域で、現金を受領する権利を認めるようメキシコの政治家に強く働きかけている。この動きは、論争とともにビジネスも生み出している。
2017年にロイターが行った分析によれば、ブラジルでは、ウーバーが現金での料金受領を開始した後、同社の運転手が被害者となる強盗・殺人件数が急増。ウーバーは、運転手の保護を改善するため、乗客の本人確認を行う手段を追加したと述べている。
メキシコでは、こうした被害の増加はまだ見られない。とはいえ、現金での料金受領を主張するウーバーの立場は、メキシコ国内の一部の州で当局との対立を生んでいる。
中国の新興企業に対して海外展開に向けた支援を提供するイェーモビの国際事業部を率いるデイジー・ウー氏によれば、ディディはこうした障害を回避しつつあるように見えるが、ラテンアメリカでは文化的なハードルに直面しているという。
ウー氏は、ラテンアメリカの消費者は一般に中国ブランドよりも米国ブランドを好むと指摘し、さらに、中国の企業文化は現地従業員の反感を買う可能性があると言う。
「ラテンアメリカ諸国に進出した中国企業の大半は、なかなか成功できずに苦労している」とウー氏は言う。
たとえば滴滴出行は、採用面接の日程をクリスマスの週に設定しようとして、同社への就職を希望するメキシコの志願者を困惑させている。ある応募者はロイターに対し、「非常に驚いた。休暇をキャンセルしないといけないのか、と思った」