最新記事

ライフライン

アメリカの橋は本当に危険? インフラ「劣化説」を検証した

2018年2月6日(火)12時28分

米国の橋梁問題の現実をよりよく反映しているのは、州間高速270号線がセントルイス郊外でフィーフィー・クリークを渡る地点だろう。

米運輸省の2017年版全国橋梁要覧をロイターが分析したところ、この橋を通過するのは1日約22万3000台で、米国で最も交通量の多い橋の1つである。この要覧は、国内の高速道路に架かる全長約約6メートル以上の橋梁61万5000カ所を網羅している。

ミズーリ州政府は、このフィーフィー・クリーク橋には構造的な問題があると考えており、改修費用として500万ドルを計上している。

橋梁の末端部分を支える構造の内部及び周囲に劣化が生じているのが問題だと、ミズーリ州の運輸局技官デニス・ヘックマン氏は指摘する。改修を必要とする橋梁では崩壊のリスクも高くなるが、必ずしもすぐに危険があるとは考えられていない。

ミズーリ州内には、2017年版要覧によれば、1日20万台以上の交通量があり、構造的問題を抱えているとされる橋梁が4カ所ある。「危険な段階にあれば通行止めになる」とヘックマン氏は言う。

実際には、州政府や地方自治体はたえず幹線道路や橋梁の改修を行っている。連邦政府による拠出を合わせると、2012年の橋梁改修支出は164億ドルに達していると、幹線道路への好況投資に関する米連邦道路管理局(FHWA)の最新報告書は示している。

米連邦議会予算局による2015年の報告書によれば、輸送・水道インフラ向け公共投資は、インフレ調整後の数値で見ると、米当局が金融危機後を受けた大不況対策を打つ中で、2009年と2010年にやや増大したが、その後4年間は減少している。

橋梁に関しては、ちょうどインフレ率に見合う程度に投資をやや増加させていけば、改修を必要とする橋梁の比率は2032年までに約3分の2に低下するだろう、とFHWAは昨年の報告書で述べている。

道路や橋梁の保守・拡充のためには、年間約370億ドルの予算を追加すれば十分だとFHWAは指摘している。

(翻訳:エァクレーレン)

Jason Lange and Katanga Johnson

[ワシントン 31日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中