アメリカの橋は本当に危険? インフラ「劣化説」を検証した
今回のロイターによる分析は、米国の道路インフラは依然として世界最高レベルだという、複数の独立した評価と一致している。
橋梁を含む道路ネットワークでは、米国は主要先進国のなかで世界第3位にランクされており、日本とフランスには後れを取るものの、ドイツ、英国、カナダ、イタリアを上回っている。これは、世界経済フォーラム(ダボス会議)がまとめた、企業幹部による最新の「世界競争力報告」からのランキングだ。
インフラ全般の質に関するランキングでも、米国は日本とフランスに微差で続いている。
専門家は、今後10年間で官民のインフラ投資を1─2兆ドル増やせば、拡大する経済のニーズを満たす、あるいはそれに近づくことになるという点に同意している。
だが、このままトランプ大統領などの政治家によってこの議論が歪められてしまえば、老朽化した水道管からの鉛被害や学校施設の整備など、切迫したインフラ投資ニーズ、あるいは地域経済効果の高いプロジェクトに投じるべき資金が奪われてしまうリスクが生じる。
「橋梁を改修するのも結構だが、その間に、メンテナンスを受けていない水道管が破裂して通勤経路が途絶してしまう」と語るのは、インフラ設計会社リフォーカス・パートナーズの創業者シャリーニ・バジハラ氏だ。
米国土木学会では、国内の大量輸送システムは他のインフラに比べ、質と予算措置の点で劣悪な状態にあると考えている。このロビー団体は2017年の報告書のなかで、米国のダムや堤防、上水道施設は橋梁よりもさらに悪い条件下に置かれていると評価している。
きっかけは崩壊事故
インフラ懸念が米国社会を揺るがせたのは、2007年、ミネアポリス市内のミシシッピ川を渡る州間高速35号線の橋梁がラッシュアワーに崩壊したことがきっかけだ。13人が犠牲となったこの事故を受けて、橋梁への投資拡大を求める声が高まり、その後の米国インフラに関する議論の基調となった。
だが連邦捜査官によれば、この崩壊の原因は老朽化ではなく設計上の欠陥だったという。