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アディダス快進撃、サッカーや男性向けだけじゃない強み

2017年5月11日(木)16時50分
常盤有未(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

今年3月、原宿に開業した旗艦店。原宿周辺の都市型ランナーをターゲットとしている(記者撮影)

スポーツメーカー世界2位の独アディダス。現在の業績は絶好調で、2016年12月期は売上高192億9100万ユーロ(約2兆3816億円)、純利益も10億1700万ユーロ(約1255億円)と創業以来初めて10億ユーロを突破した。首位の米ナイキ(2016年5月期の売上高は323億7600万ドルで約3兆6377億円)とともに、3位以下を大きく引き離す。

アディダスは2020年までの中期戦略で、東京、ニューヨーク、ロサンゼルス、パリ、ロンドン、上海の6都市をキーシティ(重要都市)に位置付け、投資を集中させる方針を掲げている。具体的には、ロボットを活用した靴生産などの「デジタル化」と「女性向け商品」で攻勢をかける考えだ。2016年10月に就任し、この度初来日したカスパー・ローステッドCEOと、アディダス ジャパンのポール・ハーディスティ社長に戦略をどう実行するのか聞いた。

東京は世界でも大きな役割を果たす市場

――東京を含むキーシティの収益を、2020年までに2015年比で倍にする計画だ。東京の特徴や成長性をどう分析しているか。

ローステッド:東京の特徴は2つある。1つめは、ファッションのトレンド、流行の多くは東京発祥でもあり、世界的に影響力があるということだ。もう1つは、日本の消費者はスマートフォンをよく活用するなど、デジタル技術に親しみ、精通しているということだ。

多くのテクノロジー、イノベーションが日本から生み出されている。2020年には五輪が開催されるので、東京は世界に対して一層大きな役割を果たしていくことになるだろう。

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カスパー・ローステッド/1962年デンマーク生まれ。米オラクル、米ヒューレット・パッカードなどを経て、2005年独ヘンケル入社、2008年ヘンケルCEO。2016年8月アディダス入社、同10月からCEO(撮影:尾形文繁)

ハーディスティ:実際に、日本発のコラボレーションは長年の歴史がある。山本耀司氏とのコラボブランド「Y-3(ワイスリー)」を皮切りに、有名デザイナー・ファッションブランドとコラボしてきた。

超軽量ランニングシューズの「adizero(アディゼロ)」と、アルミの小片が肌に接触して冷感をもたらすウエア「CLIMACHILL(クライマチル)」。この2つのテクノロジーは日本で誕生したものだが、今ではグローバルで展開される商品だ。ラグビーのワールドカップ(2019年)や東京五輪は、アディダスとしても注目度はとても高い。

――ローステッドCEOは、前職の日用品大手・ヘンケルでもCEOとして実績を残してきたが、デジタル化に関してアディダスではどのような戦略を考えているのか。

ローステッド:より多くの商品をネットで売り、消費者とのかかわりを強化する。2020年までにネットの売り上げを2016年の4倍となる40億ユーロにしたい。直営のネットストアはもちろん、パートナーシップを組んでいる企業のネットストアやSNSも活用していく。

将来的に、商品の製造もデジタルに向かっていく。3Dスキャンで足型などを測り、3Dプリンタで、特定の消費者のためにカスタマイズされた商品を作っていく。まだ初期段階だが、今後、デジタルは業界を明らかに大きく変化させる。

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3Dプリンタで靴を試作。アディダスは消費者の好みや特性に合わせて素材や足型などをデザインする構想を進めている(写真:アディダス)

また、集めた情報を消費者に意味ある形で提供することが必要だと感じている。たとえば、センサーに対する新しい試みを行っている。

サッカーを例にすると、選手の心拍数と走行距離という情報だけでは不十分だ。ボールにチップを埋め込むことで、練習や試合後に、フリーキックで蹴ったボールの軌道や回転がどうだったかを確認することができる。(市販されているセンサー内蔵ボールやスパイクを使えば)試合にまったく異なる「知能」を導入することが可能になる。すごく速く走っていたのか、ちょっとさぼっていたのか、ということまで隠すことができなくなってしまう(笑)。

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