最新記事

映画

20年目に大復活した『トレインスポッティング』

2017年4月12日(水)11時10分
ジューン・トーマス

大金を持ち逃げしたレントン(左から2人目)が故郷に帰り、再び4人の仲間がそろう

<スコットランドのワル仲間を描いた、あの傑作の続編に4人組が再び集結>

スコットランドのエディンバラ北部にあるリースで育ったヘロイン依存の若者が、仲間たちを出し抜いて麻薬取引の儲けを全て持ち逃げする――それがダニー・ボイル監督の96年の名作『トレインスポッティング』の幕切れだった。

故郷を去ったのは、マーク・レントン(ユアン・マクレガー)。残された仲間はシック・ボーイ(ジョニー・リー・ミラー)、ベグビー(ロバート・カーライル)、スパッド(ユエン・ブレンナー)の3人だ。

続編の『T2 トレインスポッティング』では、オランダのアムステルダムで20年を過ごしたレントンが故郷に戻ってくる。彼は仲間との関係を取り戻せるのか。仲間に殺されるのか。

彼らはみんな、それだけの年月がたってもほとんど変わっていない。特にマクレガーとミラーは、全く20年前のままのようだ。前作のシーンが挿入されると、2人がどちらの時代にいるのか見分けがつかなくなる。

シック・ボーイは今もリースに住み、パブを経営しながら、ゆすりと売春稼業で生きている。スパッドは相変わらずヘロイン依存で、恋人のゲイルや息子との仲を修復しようとするが見込みは絶望的だ。

長いこと塀の中にいたベグビーは、外の世界で場違いな気分を味わっている。携帯電話や今どきのファッションになじめず、息子が家業の泥棒よりホテル経営に関心を持っていることに当惑する。

【参考記事】ケン・ローチが描くイギリスの冷酷な現実

ノスタルジアの世界へ

レントンが旧友たちの人生に再び足を踏み入れると、昔のパターンが繰り返される。彼はゲロにまみれた場面でスパッドを助け、リハビリプロジェクトを試みるが、その目的はスパッドよりも自分のためだった。

シック・ボーイとは大げんかになるが、すぐに少年時代のサッカーのスターの話で盛り上がる。ベグビーは小学生の頃と変わらず、野蛮で口汚いワルだ。

96年の前作は、労働者階級が善良な「地の塩」から「地のカス」へと転じたイギリス社会の分岐点を描いた。だが、この文化的変容は作品中で掘り下げられることはなく、ただ提示されただけ。例外は、続編でも繰り返される「人生を選べ」という大量消費社会を批判する言葉くらいだった。

『T2』も前作と同様、「社会学」的な要素の扱いは軽い。上品な今のスコットランドと、恥ずべき負の歴史との対比がそれとなく描かれる程度だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドイツ極右AfD、世論調査で初の首位 既成政党への

ビジネス

ミネベアミツミ、芝浦電子にTOB 1株4500円

ワールド

米政権、「国家気候評価」作成のコンサルと契約終了へ

ビジネス

米SEC委員長にアトキンス氏承認、執行措置縮小も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた考古学者が「証拠」とみなす「見事な遺物」とは?
  • 4
    【クイズ】ペットとして、日本で1番人気の「犬種」は…
  • 5
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 6
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    毛が「紫色」に染まった子犬...救出後に明かされたあ…
  • 9
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 10
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中