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トランプ政権誕生と中国

2017年1月20日(金)16時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


 トランプ次期大統領の個人的性格や言動に関しては批判もあろうが、しかし、中国の独裁的な覇権と膨張を抑える意味では、意義のある大統領が誕生すると言っていいだろう。

問われる中国共産党政権の統治の正当性

 そもそも拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』にも書いたように、中国共産党は日中戦争中に日本軍とはまもとに戦わず、日本側に政敵であった蒋介石・国民党軍の軍事情報を高値で売り付け、国民党軍の弱体化に主力を注いできた。

 国民党軍も中華民族。中国の人民である。

 その人民を裏切って強大化した中共軍は、それによって中華人民共和国を誕生させた(日本敗戦4年後の1949年10月1日)。だというのに、抗日戦争中の中流砥柱(大黒柱)は中共軍であったと、事実を歪曲して、中国共産党が中国という国家を統治する正当性を主張している。

 中国の知性ある人はその真相を知っているし、中共指導層自体が、自分の歴史を知っている。ノーベル平和賞を受賞し、そのときすでに投獄されていた劉暁波氏は、投獄される前にこの真相をネットで公開していた。

 昨年2月に他界した顧雪擁氏(日中戦争時の中共側戦場記者。1920年生まれ)は生前、「覆い隠された抗日戦争の真相」という論評を残している。

 中国人民の多くがこの真相を知るのは、それこそ時間の問題だ。

 中国は、本当は、そのことを恐れている。

「一つの中国」原則を深めていけば、必ず最終的にはそこに行きつく。「中国共産党はいかにして強大化したのか」という問題に行きつくのである。

 だから軍事的にも経済的にも、世界を制覇し、膨張を続けていくしかない。日中戦争で勇猛果敢に戦ったという歪曲した「抗日神話」を維持し、戦後の国際秩序を形成したのは中国(中華人民共和国)なので、その国際秩序を維持するために軍事大国にならなければならないという論理である。

「一つの中国」を最初に認めてしまったアメリカは、それを全世界に拡散させ、中国を強大化させてしまった責任を、どこかで取らなければならないだろう。

 いま世界は、その分岐点に立っている。

 安倍外交が成功するのか、それとも習近平外交が成功するのか、注意深く今後を考察したい。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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