トランプ政権誕生と中国
ダボス会議は各国の競争力を指数化して公表し、グローバル化に貢献する経営環境を推奨している。2002年には同時多発テロの影響がありニューヨークで開催されたが、中国の大連などで開催されたこともある。世界レベルの経済フォーラムだ。
日本からは2001年に当時の森首相が現職の首相として初めて出席し、2008年には福田(元)首相が、そして2009年には麻生(元)首相が出席し、しかも2年連続で演説さえしている。
ただ基本的には発祥地の関係から、ヨーロッパ経済界に強い影響力を持つ傾向があり、習近平国家主席が、トランプ政権誕生前夜という、このタイミングでダボス会議に出席しただけでなく、基調講演まで行なった事実は大きい。
1月18日付の本コラム<習近平、ダボス会議で主役 ――「鬼」のいぬ間に>でも書いたが、習近平国家主席は「中国こそはグローバル経済の旗手である」という印象を与えるスピーチをした。
それに対してダボス会議のシュワブ会長は習近平国家主席のスピーチを絶賛しただけでなく、「中国こそが今後のグローバル経済を牽引していく大国だ」と二人の会談で述べている。中国メディアが伝えた。
イギリスのメイ首相が同日、EU(欧州連合)からの離脱を正式に発表し、ヨーロッパでもグローバル経済が揺れる中、トランプ次期大統領はイギリスの行動を絶賛し「このあともイギリスにならう国が続くだろう」とツイートした。EU加盟国が一斉にトランプ次期大統領に反発した、まさにそのタイミングでの習近平国家主席のスピーチは、あたかも「中国はEUの味方だ」というエールを送ったような形になった。
中国にとっては、一見、「結構づくし」のように見えるかもしれない。
外交安全に関して追いつめられる中国
しかし、なぜ習近平国家主席自らが、初めてダボス会議に出席しなければならなかったかというと、実は裏を返せば、中国が外交安全に関しては(あるいは国内事情においても)、完全に「追い詰められている証拠」なのでもある。
昨年12月13日のコラム<トランプ氏「一つの中国」疑問視に中国猛反発>や、今年1月12日のコラム<中国、次は第二列島線!――遼寧の台湾一周もその一環>など、本コラムの多くで書いてきたように、トランプ次期大統領が「一つの中国」原則論にメスを入れたことにより、中国は退路のないところに追い込まれている。