超有名レストラン「ノーマ」初の姉妹店はカジュアルに進化
皮肉なことに、彼は最もノーマらしいやり方で自分の道を取り戻した。森を探索しての「狩猟採集」だ。メニュー作りでは子羊の肩肉料理に合う素材を探し歩いた。リンシードと味噌を合わせたたれを200キロ分も使って試行錯誤した末に、もっと身近な発酵プラムを使ったソースを編み出した。
7月に常設店舗を開店する頃までには、手堅いメニューの数々が完成した。新鮮でモダンながら、くつろげる品々だ。
価格と手軽さでは、108はノーマよりはるかに上を行く。カフェコーナーでは朝にはコーヒーとペストリーが、夜にはワインが楽しめるし、最近ではランチプレートも始めた。100クローナ(約15ドル)という衝撃の庶民価格だ。何カ月も前から予約が取れないノーマと違い、予約なしの客のための席も空けてある。
【参考記事】美味しいロンドンはロシアが作る
森の香りも楽しむ魚料理
108は北欧の技法をたっぷりと取り入れている。狩猟採集、発酵、酢漬け、燻製......これらを駆使して、独創的であると同時に心地よい料理を生み出す。
アラカルトメニューでは宝石のような小皿料理と、肉や魚のメイン料理が組み合わされている。小皿料理では、サバの塩漬けが圧倒的な人気だ。見た目はとてもシンプル。新鮮に光った三角形の切り身が、マツ科トウヒで作られたエメラルド色のオイルの上に並んでいる。
サバはパインソルトに短時間漬けてあり、塩漬けグーズベリーのトッピングが加わる。おかげで海の味わいとともに森の香りを楽しめる一品に。甘く、しょっぱく、新鮮で刺激的な味だ。
3つのメインのうち、子羊肩肉のローストは、よりバランスが取れている。ピリッとしたエルダーベリーのケッパーが、燻製バターでコクを出した柔らかな肉にアクセントを添える。
味噌パン粉がけのアンコウのグリルは、ニスを塗られたようにつやつやになって運ばれてくる。魚の甘い味わいは広葉樹の燻製で引き立てられている。
最後は、サワードーのコーンに色鮮やかなブルーベリーアイスがたっぷりのったデザート。本格的な料理は、変化球で締めくくられる。
ノーマの殻をも破る独創的な料理にカジュアルな雰囲気とあれば、客が途切れないのも無理はない。バウマンの多忙な日々は、当分終わりが見えなそうだ。
[2016年12月20日号掲載]