最新記事

プーチン訪日を批判報道する中国――対中包囲網警戒も

2016年12月19日(月)16時35分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 中国には、ハグしてキスをしようとしている「プーチン×習近平」の姿が「プーチン×トランプ」の姿に差し替えられる風刺画がネットに上がった。習近平がトランプに「恋人」を奪われた形だ。

 そこに加えて「安倍×プーチン」などが出現したら、たまらない。

 いかに「安倍首相の片思い」であるかを、必死になってアピールしようとしている。

 しかし安倍首相にとってはロシアを敵視して日露接近を牽制するオバマ大統領よりも、「プーチンという男」を評価するトランプ次期政権の方が楽になるだろう。

 プーチン大統領の読売新聞単独取材における「対露制裁に加わりながら、日露経済協力というのは...」という言葉を中国メディアは最大限に利用しているが、しかしそれでも「安倍・プーチン」は、経済協力に向けて動き始めた。

 ドナルド・トランプという人物の登場により、北東アジアのマップは変わりつつある。

 たまたま15日、フォーブズによる「世界で最も影響力のある人物」ランキングが発表された。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が4年連続で首位に立つ結果となったとのこと。

 2位に入ったのは、ドナルド・トランプ次期大統領だ。

 ヒラリー・クリントン女史も、初めてのアメリカの女性大統領としての価値はあったかもしれないが、圧倒的にトランプ氏の独特の感性と予測不可能性の方が面白い。

「プーチン×トランプ」と「プーチン×安倍」の間で、「プーチン×習近平」は霞んで見えるし、「トランプ×習近平」に至っては、「一つの中国」原則によって遠ざかるばかりだ。

 オバマ大統領は「一つの中国」原則を守れと叫んでいるが、それでは中国の覇権を増長させるのみだろう。戦争を起こさず、ギリギリの言葉で脅していくトランプ劇場は、見ものではないか。

 プーチン訪日は、その劇場の一端を覗かせてくれた。

 困難も矛盾も多かろうが、安倍首相には、「1ミリでもいいから」前に進む姿勢を継続してほしい。それが北東アジアのパワーバランスを方向づけていく。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米関税対応巡りサウジ・南アと協議 協力強化な

ワールド

原油先物は続落、2週連続下落へ 貿易戦争による需要

ワールド

インド25年成長予測を30bp引き下げ=ムーディー

ビジネス

独BMW、米国工場で最大8万台の増産を検討
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が見せた「全力のよろこび」に反響
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 10
    右にも左にもロシア機...米ステルス戦闘機コックピッ…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 10
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中