最新記事

感染症

カーニバルや五輪控えたリオデジャネイロ、ジカ熱制圧に総力戦へ

2016年1月29日(金)10時41分

 一方、医師や保健当局者らは、防蚊対策に市民を関わらせることが課題だと話す。

 中南米全体に見られる不十分な開発と大きな格差が都市部での流行に大きく寄与したことは間違いないが、一部の住民は基本的な保健や教育など公的サービスをしばしば提供できない行政に対し否定的であったり、反感を抱いたりしている。

 リオでは、保健当局者は犯罪や安全上のリスクから、居住区に入れないことすらある。

 「市や国が言わねばならないことに、多くの人は聞く耳を持たない。保健従事者が部外者とみなされた場合、人々に協力させるのは難しい」と、政府系機関であるオズワルド・クルーズ財団のエルマノ・カストロ氏は語る。

 過去に行われたネッタイシマカ駆除対策は失敗に終わった。この蚊は黄熱病やデング熱、チクングンヤ熱など他の熱帯病も媒介することで知られている。

 当局は停滞水の危険性について住民に知ってもらおうと努力しているものの、デング熱感染は過去数年で悪化している。リオでは昨年、感染例は前年比10倍増となり、少なくとも22人の死亡が確認されている。

 ジカ熱流行は、オフショア油田からのロイヤルティが急減し、困窮するリオデジャネイロ州政府が病院や研究施設の閉鎖を余儀なくされていた時期と重なった。

 「デング熱も制御できていないのに、今度はジカ熱とも闘わねばならない」と語るのは、リオで有名な小児科医ダニエル・ベッカー氏。他の多くの医師同様に同氏も、小頭症への不安が、ブラジルでは違法である中絶の急増につながることを危惧している。

 (Paulo Prada記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

 

[リオデジャネイロ 26日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中