中台トップ会談――軍事パレードによる威嚇も効果なく
2014年の北京APECの際に、馬英九が北京に行き習近平と会いたいと希望を伝えたが、習近平はそれを拒絶していた。なぜなら「大陸と台湾」は「国内問題」であり、国際会議であるAPECのときに会うのは不適切だと判断したからである。
その意味では、「中台首脳会談」などという表現をするのは適切でないことになろう。
台湾の総統は、どこかの「国家の首脳」ではないのである。
だらか、今回は互いに相手を「先生」と呼ぶことにしている。中国には、日本語の敬称「~さん」に相当する言葉はない。せいぜい、「先生」と言うしかない。
そこまで細心の工夫がなされているので、日本のメディアは「中台首脳会談」と表現しないように、気をつけなければならない。「一つの中国」を認めないのなら、また話は別だが......。
日本の一部のメディアでは、南シナ海問題で中国は強硬姿勢を取っているが、台湾に関しては柔軟路線に転換したのだろうといった、かなり見当違いの報道をしているが、このようなことを言っていたのでは、またしても中国の戦略を見誤る。国共内戦を現場で経験した者として、注意を喚起したい。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。