中台トップ会談――軍事パレードによる威嚇も効果なく
統一反対! 台北で習近平と馬英九の会談に反対する若者たち Pichi Chuang- REUTERS
7日、習近平国家主席と馬英九総統がシンガポールで会談する。1949年に中華人民共和国が誕生して以来、中台トップ会談は初めてだ。9月3日の軍事パレードでも十分な効果を発揮できなかった習近平の焦りと国民党消滅危機がある。
来年の総統選挙で民進党が優勢
来年の台湾における総統選挙において、独立傾向の強い民進党の蔡英文氏が圧倒的にリードしている。その理由に関しては10月9日付の本コラム「台湾・蔡英文氏訪日と親中・親日をめぐる闘い」で書いたように、台湾国民は北京寄りの馬英九政権に見切りをつけているからだ。
香港統治において「一国二制度」を実施し、それがいかに素晴らしいか、いかに北京が香港の自治を守っているかを台湾に見せて、やがて台湾を「一国二制度」で統一しようともくろんでいた。
しかし香港の自治は守られず、若者たちが中心になって雨傘革命を起こした。
台湾でも若者が立法院を選挙するという「ひまわり運動」が起きて、北京寄りのサービス貿易協定を阻止することに成功している。昨年末の台湾の統一地方選挙でも、民進党が圧勝した。
国民の多くが中国共産党の一党支配体制を嫌い、そこから逃れようとしているからだ。
しかし北京政府にとっては、台湾はまだ「未解放」の「中国の一部」であって、第二次世界大戦終戦から1949年10月1日に中華人民共和国が誕生するまでの間に戦われた「国共内戦(国民党と共産党の間の内戦)」が終わってないのである(解放というのは、中国人民解放軍が占拠し制圧することを指している)。台湾はソ連の海軍や空軍の支援をもらって解放すればいいとして、先に中華人民共和国誕生を宣言してしまったのである。1950年に起きた朝鮮戦争で、その望みは断たれ、今日に至っている。
だから、北京政府にとって、「台湾解放」というのは、いかなる問題よりも優先される最も大きな国家の課題だ。宿願である。
今では「台湾統一」という言葉を使っているが、その統一が、民進党の圧勝によって遠のこうとしている。
これは、国家の命運にかけても許されないことである。
軍事パレードは台湾に見せるためのもの
だから今年9月3日に、習近平政権は異様なほどの力を入れた軍事パレードを行なった。万一にも台湾が独立を選ぶようなことがあったら、2005年に制定した反国家分裂法を発動させるぞ、という威嚇を台湾国民に与えるためだ。これに関しては8月13日付の本コラム「中国の軍事パレードは台湾への威嚇」で詳述した。中国のこの「心」に関しては、中国政府関係者から直接聞いており、それがいままさに現実のものとなっているのである。