最新記事

東アジア

日中韓首脳会談――中国こそ「歴史直視」を

2015年11月2日(月)15時43分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

共闘体制? 李克強(右)と朴槿恵(中央)は歴史問題でJung Yeon-je-REUTERS

 3年半ぶりの日中韓首脳会談は、開催されたのはいいものの、開催されなかった原因と同じく、中韓からの「歴史直視」要求に終始した。しかし歴史を直視すべきは中国自身であることを中国は知らなければならない。

李克強首相の韓国『朝鮮日報』への寄稿

 10月31日に中韓首脳会談を行うに当たって、その前日の30日、中国の李克強首相は韓国の新聞『朝鮮日報』に署名入りの原稿を掲載した。概要を以下に記す。

――中韓の友好関係はますます友情深く発展してきた。貿易額も20年前の60倍になり、貿易額は3000億ドルに達している。また観光など、人的交流は毎年1000万人に及び、毎週1000便以上の航空が中韓の間を行き来している。中韓両国は戦略的に協力しながら発展していくことを強化していかなければならない。中韓両国は歴史の大河の中で、命運を共にし、栄辱を共にしてきた。中国は韓国と共に、共同で歴史を銘記していきたい。

 おおむね、このような内容だが、「歴史の栄辱を共にし」と「共同で歴史を銘記し」が、日本を指していることは、説明するまでもないだろう。訪韓前に、すでに「対日共闘」のメッセージが発せられていたのだ。

「対日共闘」は、10月28日にソウルに設置された韓国人と中国人の慰安婦を象徴する「少女像2体」によっても象徴されている。

 この少女像に関するメールが、盛んにサンフランシスコから筆者の受信ボックスに送られてきているのは、2年後のユネスコの世界記憶遺産登録への共同申請を全世界に呼びかけていることの何よりの証拠だろう。日中だけでなく、国際社会全体に呼びかけて、何としても次のユネスコ世界記憶遺産登録を睨んでいる。もちろん、日本の「戦争犯罪」を世界の共通認識にして、日米関係を強化しているアメリカを弱体化させて、中国が世界ナンバーワンに上り詰めるための長期的戦略だ。

中韓首脳会談

 10月31日にソウルを訪れた李克強首相は、韓国の朴槿恵大統領と、大統領府で会談した。中韓首脳会談は、双方のとろけんばかりの満面の笑みの中で、華やかに行なわれた。

 CCTVの解説は、「領土問題、歴史問題、そして最近は戦争問題などで日中韓3か国首脳会談は途切れており、そもそも日本を交えた会談には、何ら期待すべきものはないが、それでも開かないよりはいいだろう」という前置きをしてから、中韓首脳会談の素晴らしさを讃えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中