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日中韓首脳会談――中国こそ「歴史直視」を

2015年11月2日(月)15時43分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 イギリスに次いで、人民元建ての債券を韓国でも発行することや、一帯一路を韓国とともに建設発展させていくこととか、18項目のプロジェクトに関する提携が調印されたことなどが、誇らしげに報道された。また日中韓の自由貿易協定FTAを進めることも確認されたとのこと。中国としては、韓国にはTPPに参加するなど、日米側には付いてほしくないからだ。だから中国を中心としたFTAにより韓国を惹きつけ、日本をアメリカから少しでも離したい。

 11月1日の午前中には、李克強首相は韓国企業400社(CCTV発表)との間でフォーラムを開き、歓迎レセプションにおける昼食会でスピーチをしている。企業との歓談であるにもかかわらず、なんと抗日戦争勝利70周年記念に触れて、「外国からの侵略と植民地の歴史を中韓は共有している」と、またもや対日共闘を呼び掛けたのである。

日中韓首脳会談後の共同記者会見と日中首脳会談

 11月1日の午後に行われた日中韓首脳会談後の共同記者会見で、李克強首相はやはり「3カ国は一致して歴史を直視し、未来志向で歴史の敏感な問題を善処していく」べきであるという原則を披露した。もちろんFTAなどにも言及はしたが、しかし中国の魂胆が丸見えであるため、「歴史を直視」という文字ばかりが筆者には大きく映る。

 日中首脳会談でも李克強首相は「こんにちまで3カ国首脳会談が開催されなかった原因がどこにあるか、日本はよくわかっているだろう」と安倍首相に「上から目線で」言っている。しかも、まるで「笑ったら懲罰を受ける」とばかりに、朴槿恵大統領との会談のときに見せた、あの満面の笑みは完全に消え、暗く厳しい表情を保ったままだ。カメラに撮られるとまずいのである。反日教育を受けて育った、数億におよぶ若いネットユーザーたちに、「売国奴」と罵倒されてしまうからだ。

「戦略的互恵関係という大局に立って、敏感な問題を善処しなければならない」とする李克強首相に、安倍首相は、第一次安倍内閣のときの2006年に「自分が戦略的互恵関係を提唱したのだ」と、せめてもの抵抗を示した。

 中国がこの時点で日中韓首脳会談や日中首脳会談に応じたのは、昨日のコラム<南シナ海、米中心理戦を読み解く――焦っているのはどちらか?>に書いたように、IMFにおける特別引出権(Special Drawing Rights:SDR)の構成通貨に人民元を採用する決議をするときに、日本にも賛成票を投じてほしいからである。

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