最新記事

東アジア

日中韓首脳会談――中国こそ「歴史直視」を

2015年11月2日(月)15時43分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 そのため東シナ海のガス田開発などに関して対話の再開を約束したようだが、それでもなお、日本に対して「歴史直視」を要求し、高飛車な態度を取り続けることには変わりはない。南京事件の次は慰安婦問題で韓国と手を結ぶのは明らかだ。

 安倍首相は70年談話で、こういった負の遺産を子々孫々にまで残したくないという趣旨のことを言ったが、中国のこの姿勢は永久に変わらないだろう。

 この負のスパイラルにピリオドを打つには、日中戦争時代に中国共産党軍が何をやっていたかを直視するしかないのである。その真相を浮き彫りにすることによってのみ、「真の日中理解」が生まれる。

 歴史認識に関する会話は互いに公開しない約束になっているそうだが、しかし、一連の流れから大方の察しはつくだろう。

 闇に葬るようなことではない。

中国は自らの歴史をこそ直視せよ

 8月25日付の本コラム<毛沢東は抗日戦勝記念を祝ったことがない>や10月13日付の<毛沢東は「南京大虐殺」を避けてきた>にも書いたように、日中戦争時に日本軍と戦ったのは現在の中国ではない。蒋介石が率いる「中華民国」の国民党軍だ。

 このとき中国共産党軍は延安の山岳地帯にいて、日本軍との接触を避けていた。国民党軍に追われて延安に逃れ、武器どころか食べるものさえない状態だったのだが、1937年からは国共合作(国民党と共産党が協力して日本軍と戦う戦術)を実施し、国民党の禄(ろく)を食(は)み、武器や衣服まで与えられるようになっていた。

 そして8月3日付の本コラム<兵力の10%しか抗日に使うな!――抗日戦争時の毛沢東>に書いたように、毛沢東はやがて国民党軍の蒋介石をやっつけて天下を取るために、兵力を温存していた。

 最も有利だったのは、国共合作により、国民党軍の軍事情報をすべて知ることができるという立場にいたことだ。

 毛沢東はスパイを派遣して、日本軍や日本の外務省の出先機関と秘密裏に接触させ、知り得た国民党軍の軍事情報を、日本側に高額で売っていたのである。

 これ以上の詳細を書くと、出版社に叱られるので、詳細は『毛沢東 日本軍と共謀した男』に譲る。

 しかし、こうして誕生した共産党政権のどこに、日本に向かって「歴史を直視せよ」という資格があるのだろうか?

 中華人民共和国は、1945年8月15日以降に、「中華民国」の国民党軍を打倒して、1949年10月1日に誕生した国家である。毛沢東は、国民党軍を弱体化させてくれた日本軍に感謝していた。現在の中国は抵抗するだろうし、一部の日本人は中国の怒りを恐れて自分を抑え込むかもしれない。知らないうちに、日本人も中国の主張に洗脳されてしまっているのである。だから日本人自身も、この事実を直視する勇気を持たなければならない。なぜなら、これは事実だからだ。この事実を認めてこそ、真の平和がやってくる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ」が物議...SNSで賛否続出
  • 3
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ「日本のお笑い」に挑むのか?
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 8
    高市首相の「台湾有事」発言、経済への本当の影響度.…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    中国人爆買いが転機、今後は「売り手化」のリスク...…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中