最新記事

ファッション

イギリス、古着を一堂に集めたクールなポップアップストアが人気 CO2削減し売上は慈善活動へ寄付

2024年02月19日(月)20時13分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

「古着の循環」をさらに加速させたい

チャリティースーパーマーケットの環境面での貢献は大きい。同サイトでは、昨年実施したポップアップストアでの売り上げやCO2削減量を公開している。

第1回目のブレントクロスショッピングセンターでのポップアップストアの成果は、ごみとして処分される約11トンの古着、約102トンのCO2量、約18,000立方メートル(小学校の25メートルプールで約45杯分)の水を削減したり節約した計算になる。このような成果は、毎回のポップアップストアでも報告されている。


イングランド南東部イングランドケント州にある巨大ショッピングモール「ブルーウォーター」での開催時にも廃棄物やCO2削減についての報告がSNSで発進された。

人気の古着交換イベントを業界関係者も主催

イギリスでは古着交換会も人気だ。たとえば、イギリス中部のノッティンガムでは、「ザ・ビッグ・スワップ」が継続的に古着交換イベントを開催し、好評を博している。参加費10~15ポンド(約1800~2800円)を払い、古着(服や靴など。ナイトウェアや下着、宝石類は不可)10点を事前に持ち込み、その後、集められたすべての古着の中から10点を選んで持ち帰れるという仕組みだ。余った古着は慈善団体が運営するチャリティー・ショップに寄付される。

またこうした古着交換はファッション業界関係者にも飛び火している。昨年2月には、ファッションチェーンのザラとコラボもしている著名トップスタイリストのハリー・ランバート氏、サステナブルファッションのインフルエンサー、ボディ・ポジティブの提唱者の3人が立ち上げた1日限りの古着交換イベント「アブソルート・スワップ・ショップ」がロンドンで開催された。

イギリスでは、年間繊維廃棄物は1人当たり3.1 kgだという。このうち、古着としてリユースされるのは0.4 kg、リサイクルして他の原材料にするのは 0.3 kgのみ。残りの0.8kgは焼却され、1.7kgは埋め立て処分されている(Circular)。

イギリスには、ヴィンテージ品や古着を新しいデザインに作り直したアップサイクル品を販売する店もたくさんある。中古ファッションのオンラインショップも増えている。様々な方法での古着の循環は、焼却されたり埋め立てられる衣類の割合を大幅に減らすことになるのか、今後の行方に注目したい。


岩澤里美[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com

ニューズウィーク日本版 独占取材カンボジア国際詐欺
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB幹部、6月の0.25%追加利下げでコンセンサ

ワールド

PLO副議長にシェイフ氏、アッバス議長の事実上の後

ビジネス

米経済停滞の予想6割に、物価高継続の見方=JPモル

ワールド

アングル:コメ譲歩に慎重論、車関税の除外不透明 日
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    タンポンに有害物質が含まれている...鉛やヒ素を研究…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:独占取材 カンボジア国際詐欺

特集:独占取材 カンボジア国際詐欺

2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影