「ノーと言われても、くじけたらダメ」──アメリカの「女性起業ブーム」の背景とは?
The Changing Face of Entrepreneurship
ガストで調査を担当したルーク・パーデューは、コロナ禍のしわ寄せを最も強く受けたにもかかわらず、有色人種の女性たちは「大きな障害をチャンスに変えてきた」と語る。
勤務時間の問題も大きい。
「パンデミックは誰にとってもリセットの機会だった。みんな、家を離れなくてよくなって、家庭への関与が強まった。そしてたぶん、自分たちが普段の暮らしの中で何かを失ってきたことに気付かされたのだ」と語るのは、全米女性経営者企業評議会のCEO、パメラ・プリンスイーソンだ。
「そして起業して今のフレキシブルな勤務形態を維持するにはどうしたらいいか考えるようになった」
資金調達は今も大きな問題
一方で、女性やマイノリティーが経営する企業への企業や政府、非営利組織からの支援が拡充しつつあることの恩恵を受けたケースも多い。
例えばキャピタル・ワンやウェルズファーゴといった大手金融機関やエンジニアリング企業のカミンズは、女性や有色人種の起業家向けにメンタープログラムを立ち上げるとともに、資金面でも支援を行っている。
投資情報会社ピッチブックの調査アナリストであるアンヌマリー・ドネガンによれば、大手金融機関やベンチャーキャピタル(VC)企業において意思決定に携わる女性が急増したことも追い風になった。
「影響は非常に大きい。なぜなら(ビジネスプランを)売り込む相手が女性投資家なら、従来型のVC企業であれば期待できないかもしれないくらいに、プランを深く理解してもらえるからだ」とドネガンは言う。
昨年のピッチブックの研究では、21年の1~9月に女性が立ち上げた新興企業が調達した資金は400億ドルを超えた。これは19年と20年のそれぞれ1年間の額の約2倍だ。
だがVCからの出資額の全体との比較で見ると、女性が立ち上げた新興企業が占める割合は22年には2.1%にすぎなかった。ちなみに共同創業者に男性がいる会社は16%だ。
残る約8割は、男性だけで起業した新興企業に流れた。ボストン・コンサルティング・グループの分析では、女性が起業した新興企業の利回りは投資1ドル当たり78セントで、男性の新興企業の31セントを大きく上回るとの結果が出ているにもかかわらずだ。
「資金調達は今も女性経営者にとって最大の問題で、有色人種の女性にとってはさらに深刻だ」とプリンスイーソンは言う。