最新記事
大地震

「破綻国家」ミャンマーを襲った2つの災害が、軍政を終わらせる可能性あり?...政治を揺さぶる「天災の力」

Double Disaster in Myanmar

2025年4月8日(火)14時20分
ルーク・ハント(ジャーナリスト)
ミャンマーの大地震で倒壊した仏塔

大地震で仏塔が倒壊(ミャンマー中部マンダレー、3月30日) AP/AFLO

<死者1万人とも推測される大地震が発生したが、内戦で国民を苦しめる軍政は終わりを迎える可能性も見えてきた──>

ミャンマーの近隣諸国はこれまで4年以上も中国、ロシアその他数カ国と共に、内戦下にあるミャンマー国民の苦境を無視し、クーデターで政権を握った国軍と取引しようとしてきた。

【画像で見る】ミャンマー大地震の被害前後を写真で比較する

そのほうが簡単だった。771キロに及ぶ中国の石油・天然ガスのパイプライン敷設から資源開発、そしてASEAN(東南アジア諸国連合)の他の9カ国の「中立外交」にとっても、交渉相手を軍政1つに絞るほうが好都合だ。


今では軍政に反対する民主派勢力がミャンマーの大半の地域を支配下に置いているが、この勢力は諸派の寄り合い所帯。そんな勢力が勝利することも、各地の少数民族が独立を宣言してミャンマーがいくつもの小国に分裂する事態も、ASEANにとっては受け入れ難いだろう。

中国はミャンマーとの取引を望む国々を率いて、軍事政権トップのミンアウンフライン国軍総司令官を国際社会が認める正式なパートナーにしようと策を弄してきた。

血塗られた軍政を正統な政権に仕立てる──どう考えても無謀な試みだが、3月28日にミャンマー中部を襲った大地震でこの企てはあっさり崩れ去った。残されたのは、悲嘆に暮れる人々と無残に破壊された都市や村々だけだ。

最初の揺れは現地時間の午後0時50分。米地質調査所の発表によると、マグニチュード7.7で、震源地は中部の都市ザガインの北西約16キロ、震源の深さは約10キロだった。12分後、マグニチュード6.4の2回目の揺れが来た。

試写会
『ガール・ウィズ・ニードル』のトークイベント付き試写会に5組10名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

グリーンランドに「フリーダムシティ」構想、米ハイテ

ワールド

焦点:「化粧品と性玩具」の小包が連続爆発、欧州襲う

ワールド

米とウクライナ、鉱物資源アクセス巡り協議 打開困難

ビジネス

米国株式市場=反発、ダウ619ドル高 波乱続くとの
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助けを求める目」とその結末
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    米ステルス戦闘機とロシア軍用機2機が「超近接飛行」…
  • 6
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク…
  • 7
    ノーベル経済学者すら「愚挙」と断じるトランプ関税.…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    娘の「眼球が踊ってる」と撮影、目の「異変」は癌が…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 9
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中