マスクの「政治的威光」に陰り? トランプとの距離と有権者の拒絶
The Musk Backlash

ウィスコンシン州の保守派判事の支援集会で聴衆の1人に100万ドルの小切手を VINCENT ALBANーREUTERS
<選挙戦で無尽蔵の資金をばらまいた、大富豪の手法が有権者の反発を招く。トランプに切り捨てられるのも時間の問題?>
4月1日、莫大な財力と官僚機構の大変革によってアメリカ政治を改革しようというイーロン・マスクの試みが頓挫した。中西部ウィスコンシン州の州最高裁判事を決める選挙で民主党系の候補が勝利。共和党が圧倒的に強い南部フロリダ州では、2つの選挙区の下院補欠選を共和党候補が制したものの、民主党候補との差は以前より小さかった。
ウィスコンシン州では民主党の支持を受けたリベラル派のスーザン・クロフォード判事が、ドナルド・トランプ大統領とマスクが支援する保守派のブラッド・シメル判事を破って当選。この結果を受け、共和党内ではトランプ政権下で拡大するマスクの政治的影響力をめぐって静かなパニックが広がっている。
屈辱的な敗北からわずか数時間後、米政治専門サイトのポリティコは、トランプが側近や閣僚に対し、マスクが政権の主要な顧問の立場から近く退く予定だと伝えた、と報じた。トランプはその後、記者団に対して「急がないが、いずれ政権を離れなければならない時が来るだろう」と語った。
通常、州最高裁選挙の注目度は低いが、今回は今後を占う対決だった。マスクはこの選挙が「アメリカと西洋文明の未来を決める」と発言。政治評論家もトランプ政権2期目の最初の試練であり、大統領選の激戦州での司法のイデオロギーバランスを一変させかねないと注目していた。