マスクの「政治的威光」に陰り? トランプとの距離と有権者の拒絶
The Musk Backlash
この選挙はアメリカの司法選挙史上最も巨額のカネが動く戦いでもあった。投じられた費用は総額1億ドルを超えた。シメルを応援したマスクが大金をばらまく一方、億万長者のジョージ・ソロスがクロフォードを支援。トランプ政権2期目に対する世論の評価を競う戦いが繰り広げられた。
同様の構図はフロリダ州の2つの補選でも見られた。民主党はトランプ支持が根強い選挙区の議席を奪取すべく数百万ドルを投じた。
ウィスコンシン州でシメルを支援した保守派活動家のチャーリー・カークは、同州での敗北が共和党の根本的な課題──トランプが出馬しない選挙をどう戦うか──を浮き彫りにしたと語った。トランプが未練を見せる憲法違反の3期目の大統領選を別にすれば、この課題は今後の全ての選挙に付きまとう。
昨年11月の大統領選でトランプにウィスコンシン州を奪われた民主党は、トランプをたたいても勝てないと踏んでいた。そこで彼らは賛否が分かれやすく、政治的実績に乏しいマスクに照準を合わせた。
連邦政府機関のリストラを進めるマスクと彼が率いる政府効率化省(DOGE)は、トランプ政権2期目序盤の目玉だが、選挙戦ではそれが足かせとなった。民主党は無尽蔵の財力を持つマスクのイメージを利用して、有権者に民主党への投票を促した。