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カナダ中銀、金利据え置き 米関税で深刻な景気後退の可能性も

2025年04月17日(木)05時41分

カナダ銀行(中央銀行)は、主要政策金利を2.75%に据え置いた。写真はマックレム中銀総裁。1月29日、オタワで撮影(2025年 ロイター/Patrick Doyle)

[オタワ 16日 ロイター] - カナダ銀行(中央銀行)は16日、主要政策金利を2.75%に据え置いた。金利据え置きは8会合ぶり。マックレム総裁は、米国の関税措置の影響を見極めたいとし、状況がより明確になるまで慎重に政策決定を進める考えを示した。

マックレム総裁は「通常よりも先を見据えた対応を控える必要がある。入手される情報が明らかに一方向を示せば、断固として行動する準備ができている」と述べた。

エコノミストらは総裁の発言を、この日の金利据え置き決定は金融緩和サイクルの終わりではなく、必要であれば景気支援に踏み切ることを示唆するものだと受け止めた。

BMOキャピタル・マーケッツのチーフエコノミスト、ダグ・ポーター氏は「経済が大幅に悪化した場合、カナダ銀行はより積極的な政策を取る可能性を明らかに示唆した」と述べた。

TDセキュリティーズの金利戦略責任者、アンドリュー・ケルビン氏も、今後経済の弱さがさらに増すと予想されるため、カナダ銀行は再び金利を引き下げざるを得なくなるだろうとの見通しを示した。

マックレム総裁は、必要なら6月に50ベーシスポイント(bp)の利下げに応じる用意があるかとの質問に対し、「今後は柔軟かつ順応性を持って対応する必要がある」と回答した。

中銀は、トランプ米政権が打ち出す関税に絡む不確実性によって通常の経済予測を示すのは極めて困難とした。代わりに、カナダの深刻な景気後退とインフレの急上昇を想定する内容を含む「起こり得る2つのシナリオ」を示した。カナダ中銀が経済予測を示さなかったのは新型コロナのパンデミック(世界的大流行)以来初めて。

1つ目のシナリオは、関税の大部分が最終的に交渉を通じて撤回される状況を想定する内容。経済成長率は第2・四半期に減速した後、緩やかなペースで拡大し、インフレは1.5%に鈍化した後、目標の2%に向かう見通し。

2つ目のシナリオでは、関税措置が長期にわたる世界的な貿易戦争を引き起こすと想定。そうなれば、カナダ経済は1年間深刻な景気後退に陥り、インフレは2026年半ばに3.5%に急上昇する見通し。

マックレム総裁は、2つ目のシナリオでは、米国の関税措置によってカナダの潜在的な生産力が恒久的に弱まり、生活水準が低下する恐れがあると指摘。同時に「これらは数多くの可能性のあるシナリオの2つに過ぎず、起こり得る結果の全てを網羅しているわけではない」と強調した。

金融市場は次回6月会合について、54%の確率で金利が据え置かれるという見方を織り込んだ。

ロイター
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