マスクの「政治的威光」に陰り? トランプとの距離と有権者の拒絶
The Musk Backlash
悪役に仕立て上げやすい
マスクは選挙の候補者ではなかったが、彼の影響力は至る所に見られた。ウィスコンシン州では、彼の政治活動委員会(スーパーPAC)がシメルの選挙活動に2100万ドル以上を投入し、マスク自ら現地入りして有権者に100万ドルの小切手を手渡し、嘆願書の署名者やその紹介人には100ドルを配った。
マスクの行動は全国的に報じられた。同州の民主党司法長官は、買収に当たるとして法的異議を申し立てたが、州最高裁は審理を拒否した。
同州のマンデラ・バーンズ前副知事は今回の選挙について「昨年11月の大統領選後初となる、真の試金石だった」と語る。「世間に多くの不満があるからこそ、マスクのような人物が、この国の司法選挙で個人としては過去最高額となる資金を投じたのだ」
民主党ストラテジストのダグ・ゴードンは、マスクは共和党支持者の間での自身の人気と影響力を見誤ったのかもしれないと指摘する。「社会保障、メディケア(高齢者医療保険制度)、メディケイド(低所得者医療保険制度)を削減しようとする彼の試みが、大多数の有権者に不人気であることは明らかだった」
DOGEによる政府全体のコスト削減に対する反発が高まるなか、マスクの好感度は着実に低下している。ハーバード大学アメリカ政治研究センターと調査会社ハリスXが3月下旬に登録有権者2746人を対象に実施した世論調査では、マスクに好意的でない人が49%だったが、好意的な人はわずか39%だった。