「左」寄り共和党がオバマを苦しめる
医療保険改革は「古い民主党」の産物
しかし医療保険制度の改革については、話は別のようだ。アメリカの医療保険制度は、適用範囲と財源という2つの大きな問題を抱えている。オバマの改革案は、適用範囲の拡大で1つ目の問題を乗り越えられそうだが、2つ目の難題の解決策はみえてこない。
オバマのやり方は経済的にも政治的にも良くない。財源の問題で影響(高い医療費)を受けている国民は85%なのに対し、適用範囲の問題で影響(適用外)を受けている国民は約15%だ。オバマの訴えは、国民にはこう映っている。「われわれの医療保険制度は機能していない上に財源もない。でも、この制度にさらに4500万人を放り込もうではないか」
国民は医療保険改革法案を古い民主党政治の産物だとみている。新しい民主党の実務型政治家がつくるような法案ではないと。ローレンス・サマーズ国家経済会議(NEC)委員長というよりリンドン・ジョンソン元大統領(民主党)によるものだと。
これでは民主党の支持基盤を喜ばせたとしても、無党派層は幻滅するだろう。今後数年で医療保険に関する政府支出が急増すれば、民主党は苦労して手に入れた経済手腕の評価を台無しにすることになる。
クリントンとブレアが90年代にそれぞれの党を中道寄りに移した当初、保守派は一時的に力を失ったが、後にさらに右傾化することで対応した(自分たちを左派と区別する必要があったからだ)。現在、右派が中道寄りになっているヨーロッパでは、左派は同じように無力化しているか、改革主義に向かっている。
アメリカの状況は流動的だ。だが今後数年で共和党が明らかに中道に向かえば、オバマは大統領として最大の難局に直面することになるだろう。