最新記事
サイエンス

老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳活」最新研究

Exercise for Your Brain

2024年5月15日(水)18時10分
パンドラ・デワン(科学担当)
高齢者 ヨガ

ヨガ特有の呼吸法と動作が加齢による脳や心血管系のダメージに効く可能性があるという RGSTUDIO/ISTOCK

<運動療法の驚くべき効果は「MRIの映像で分かるほど」と研究者。ヨガにも同等の効果が?>

年を取るにつれて私たちの脳に何が起きるのか。主な変化は脳の萎縮だが、運動によって萎縮を遅らせ、ひいてはリセットできる可能性があることが、最新の研究で明らかになってきた。

「脳は非常に複雑な器官で、多くの部位が年老いても脳が機能するように働く」と、脳の老化に詳しいイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のブラッド・サットン教授(生物工学)は本誌に語った。「脳の構造の変化はMRI(磁気共鳴映像法)で確認できる。どんな構造で、どの程度機能するのか分かる」

構造レベルでは、脳は老化するにつれて変化する。「年を取ると脳の組織が萎縮して水分(髄液)で満たされた部分(脳室)が拡大し、脳の容量の減少が見られる」

「映像を拡大すればニューロン(神経細胞)間の情報伝達も確認できる。ニューロンの構成と脳の異なる部位間の情報伝達の変化も分かる」

構造の変化は全身レベルで起きる。「私たちが注目するもう1つの大きな領域は血液の流れだ。脳内の血液の分布状況と血流に注目している」

「脳内のニューロンに十分な酸素と栄養を確実に供給し、老廃物を洗い流す必要があるが、そうしたニーズに血管がどの程度対処できているのか。加齢によるダメージを受けやすい領域はどこか──血管が詰まったり硬くなったりするのかもしれない」

実は心臓自体にニューロンのネットワークがあり、脳と絶えず情報をやりとりしている。「このシステムが老化に伴う難題にどう適応し、どのくらい臨機応変に酸素と栄養分を組織に回すのか」

1日1時間週3回で効果

サットンらの研究チームは有酸素運動が以前から高齢者の認知機能向上と関連付けられてきたことに注目。運動療法でヨガにも同等の効果があるかどうかを調べている。

「有酸素運動のグループはわずか半年で老化で萎縮した脳が大きくなる。映像で分かるほどの大きな効果だ」

言い換えれば、わずか半年の有酸素運動で脳の機能回復効果が期待できるわけだ。だが年を取るにつれて有酸素運動が難しくなる可能性もある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中