性描写もお涙頂戴もない「どんでん返し製造機」、現役医師ベストセラー作家のサスペンスは面白いのか
The Twist Machine
登場人物たち(ほぼ決まって金髪だ)に何か裏がある場合でさえ、現実味は薄い。『ハウスメイド』の冒頭で、住み込みの家政婦ミリーは10年の刑期を終えて何カ月か前に出所したばかり。刑務所暮らしはかなり忘れ難い体験だろうに、彼女は10年間の思い出話を一切口にしない。彼女の過去は空白なのだ。
マクファデンのスリラーの登場人物は皆、最初の印象とは正反対の人間だ(以下ネタバレ注意)。『ハウスメイド』でミリーの雇い主ニーナは夫にミリーが引かれていっても嫉妬しない。それどころか彼をミリーに押し付けようとする。夫が実は支配欲の強いサディストで、時々妻を部屋に閉じ込めて食事も水も与えないからだ。
TikTokで読み終えたマクファデンの本を山積みにしてランク付けしているユーザーを見かけるたび、不思議に思う。ラストであっと言わせることだけが目的の、読めば読むほど意外性が薄れていくフィクションに、よく飽きずにいられたものだ、と。
アガサ・クリスティーのミステリのような巧みで凝ったパズルと違い、マクファデンのスリラーは読者の気を引くにはあまりに肉付け不足。善人が実は悪党、悪党は実は善人だ。失踪した精神科医のものだった大邸宅に足止めされている新婚夫婦が、実は2人共その精神科医の元患者で、しかも殺人鬼だった、とか。