性描写もお涙頂戴もない「どんでん返し製造機」、現役医師ベストセラー作家のサスペンスは面白いのか
The Twist Machine
ベストセラーリストのトップに君臨するコリーン・フーバーは、大衆受けしそうなありとあらゆる工夫を作品に詰め込むが、マクファデンは際どいセックスシーンやお涙頂戴とは無縁だ。彼女の熱狂的ファンは、自分が泣いている動画や赤面して彼女の本であおいでいる動画を TikTok(ティックトック)にアップしたりしない。
彼らがアップするのは最後のどんでん返しに息をのんでいる姿だ。著者マクファデンがやることはただ一つ──彼女はいわば「どんでん返し製造機」なのだ。
設定もキャラも味気ない
実際、マクファデンは工場並みに次々と350ページ近い新作を世に送り出す(それも脳障害の専門医を続けながらだ)。今年1月末に出たばかりの最新作『クラッシュ(The Crash)』に続き、5月には『テナント(The Tenant)』の刊行が控えている。
その先は誰にも分からない。今年は始まったばかりなのだから。
当然、マクファデンの作品からは執筆というより設計に近い印象を受ける。表面は彼女の裕福な悪党のキッチンに並ぶ高級ステンレス製品のように滑らかで無機質。彼女のフィクションには雰囲気もイメージも手触りもない。