成熟し、進化を遂げるサウンド──夜更けが似合うアークティック・モンキーズの新アルバム
Another Change in Direction
協調性がないから続く
歌詞は、スティーリー・ダンやプリファブ・スプラウトが書きそうなフレーズで始まる。──「欺瞞と策略の達人の君は、ただベッドに横たわっている」
ターナーは次のように説明する。
「曲の終わりに向けてギターは激しくなる......構想の段階で僕が考えていたより大きな音だ。最初は穏やかな感じにまとめていた。でも、セッションの途中で生き生きと動きだして、最後はこんなふうになった」
「曲は常に新しい顔を見せてくれる。レコーディングをした後でもね。今のバージョンをこの前、初めてステージで演奏したけれど、まだどこか別の所に進んで行きそうな感じだった」
結成から20年。『ザ・カー』でアークティック・モンキーズのサウンドはさらに成熟し、進化を遂げている。
彼らがポスト・ブリティッシュポップ時代に突然、現れて熱狂を巻き起こしたいきさつは、ほとんど伝説になっている。初期の音源をCDに焼いてライブで配り、それをファンがインターネットにアップロードして、瞬く間に口コミで広がったのだ。
インディーズレーベルのドミノ・レコーズと契約し、06年のファーストアルバム『ホワット・エバー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット』でイギリスのチャート1位を獲得。デビュー作としてイギリス音楽史上最大のヒットとなった。
ターナーは07年から「ラスト・シャドウ・パペッツ」というバンドでも活動している。その精巧なサウンドは、『トランクイリティ』や『ザ・カー』の前奏になっているのかもしれない。
「(アークティック・モンキーズとして)初めて1つの曲を最初から最後まで一緒に演奏したのは02年の夏だった。今でも(バンドを)始める前と同じように友達だし、お互いを、自分たちの直感を、昔と同じように信じている」
彼らの息の長さと友情の最大の要因は、常に進化し続けていることだろう。それは計算されたものというより自然な流れだった。
「20年前から、メンバー間で本質的に協調性のなさのようなものがあった」と、ターナーは言う。