ゴールデングローブ賞授賞式9つの裏話
M・ストリープの「名優ぶり」から出演者が経験した「アバター効果」まで、ニュースには出ないスターたちのエピソード
セレブの社交場 『マイレージ、マイライフ』で主演男優賞にノミネートされていたクルーニー。その意外な得意技とは?(左は女優で恋人のエリザベッタ・カナリス) Mario Anzuoni-Reuters
1月17日に開かれたゴールデングローブ賞の授賞式を、私はレッドカーペットに面したガラス窓越しに見た。このイベントをおしゃれに彩ったのは、雨のなか、セレブたちにさしかけられたたくさんの赤と白の傘だった。
テイラー・ロートナーのように濡れずにすんだスターもいたが、ハリソン・フォードやサンドラ・ブロックはそれほど運に恵まれていなかったようだ。ロバート・ダウニーJr.に至っては、シャーロック・ホームズのトレンチコートもかくやというぐらいずぶぬれだった。
長年の間にゴールデングローブ賞の授賞式は世界トップクラスの有名人が集うパーティーと化している。セレブたちが「受賞おめでとう」とか言い合いながら酒を飲む社交の場だ。
『アラバマ物語』の作者のハーパー・リーまで来ていた――いや、あれは以前、リーの役を演じたブロックだったのかも。
だが例年の盛り上がり方に比べれば、今年は比較的おとなしかった。司会を務めたのが口の悪いコメディ俳優のリッキー・ジャーベイスで、『ハングオーバー』がコメディ部門で作品賞を取るというサプライズがあった割には。
ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』はドラマ部門の作品賞を受賞して、アカデミー賞の最有力候補に躍り出た。
ドラマ部門の主演男優賞を手にしたジェフ・ブリッジス(『クレージー・ハート』、同じく主演女優賞のブロック(『しあわせの隠れ場所』)、助演女優賞のモニーク(『プレシャス』)、助演男優賞のクリストフ・バルツ(『イングロリアス・バスターズ』)も同様だ。
では、ニュースには出てこない舞台裏の話をいくつかご紹介しよう。
タイガーの不倫話はご法度?
1)メリル・ストリープに「どうやっていろんな訛りをマスターするのか」と聞く人は多い。だがストリープの役作りは訛りを覚えるだけで片付くような単純なものではないから、彼女はずっと前からこの手の質問にうんざりしている。
この日もストリープが『ジュリー&ジュリア』でドラマ部門の主演女優賞を受賞したあとに受けた最初の質問は、訛りをマスターするために自宅の鏡の前でせっせと練習するのか? というものだった。
ストリープは大きく息をつき、こう言った。「そういう風には考えていません。キャラクターの話し方について心のなかにイメージがあるので、それを確かめてみるんです」
ちなみに確認の方法は、他の人々が話しているのをこっそり聞くというものだそうだ。こんな質問に怒った様子も見せなかったストリープはまさに名優だ。
2)迷子になった時に頼りになるのはジョージ・クルーニー。テレビのドラマ部門で主演女優賞を受賞したジュリアナ・マルグリース(『グッド・ワイフ』)は名前を呼ばれたとき、自分の席から舞台までなかなかたどり着くことができなかった。
「ほんとうに焦ったわ。そのとき、このよく知ってる顔が見えたの」。それは『ER緊急救命室』で共演したクルーニーの顔。マルグリースはクルーニーの頬にキスして言った。「すごくほっとしたわ」
3)サンドラ・ブロックさん、ゴールデングローブ初受賞の感想は?「ドレス、透けてないわよね?」
こう聞き返すブロックは、彼女が映画で演じてきた数々のキャラクターそのものといった感じだった。「ねえ(透けてたら)教えてくれるでしょ?」
4)タイガー・ウッズの話題を振られると、ハリウッドの人々は神経を尖らせる。『ビッグ・ラブ』でテレビ部門の助演女優賞を受賞したクロエ・セビニーはノーコメントだった。
マーティン・スコセッシ監督(セシル・B・デミル賞を受賞)はタイガーの伝記映画を撮ろうと思ったことはないかと聞かれ、謎めいた返事をした。「あれは普遍的な物語だ。歴史上の多くの人にあてはまるだろう。人間であること、それが物語だということだ」