「70年代の日本」を彷彿...発展を謳歌する「これからの国」ベトナムで見た日本企業の存在感
Seeking Growth in Vietnam

大通りに面した電器店。パナソニックの認知度はベトナムでも高い TOMOHIRO IWANABEーNEWSWEEK JAPAN
<豊富な労働力と購買力上昇で盛況のベトナム市場。成長を支える日本企業が秘める「大きな可能性」と「新たな試練」とは──>
南ベトナム解放民族戦線が、サイゴン近郊に掘り進めた総距離250キロのクチ・トンネルを根拠地として戦ったベトナム戦争の終結から間もなく半世紀。ホーチミンに改称された旧南ベトナムの首都は近年、経済自由化政策「ドイ・モイ(刷新)」の下で目覚ましい発展を遂げ、トンネルも観光地へと姿を変えた。
そんなホーチミンの地下を今、再び多くの人々が行き来するようになった。今度は戦争のためではない。この国初の地下鉄が開通したのだ。
2024年12月22日に開業したメトロ1号線は日本の官民からの支援によって建設された。国際協力機構(JICA)の円借款事業として、車両など鉄道システム一式を日立製作所、各駅舎の建設を三井住友建設や清水建設、前田建設などが担った。
この地下鉄事業に限らず、世界有数の経済成長率を誇るベトナムの発展は、多くの日本企業によって支えられている。同国に進出している日本企業は2000社以上にも及び、なおも年々増加中だ。
「6〜8%で安定したGDP成長率と若い人材が豊富なところが魅力。海路で太平洋、陸路で中国や東南アジアの新興国にアクセスできる輸送面での優位性もASEANで随一だ」と、パナソニックエレクトリックワークスベトナム(PEWVN)社長の坂部正司は言う。20~30代が多い従業員についても「手先が器用で向上心がある。勤勉で真面目な国民性が製造業に向いている」と評価する。