米でEV低調、ハイブリッド車&プラグインハイブリッド車の販売急増「政策転換に備えたヘッジ手段」
3月15日、 米国では電気自動車(EV)の売上高が鈍化する一方で、ハイブリッド車(HV)と外部からの充電が可能なプライグインハイブリッド車(PHV)の販売が急増している。写真は2023年4月、ニューヨークの自動車ショーに展示されたジープのラングラー・ハイアルチチュード(2024年 ロイター/Andrew Kelly)
米国では電気自動車(EV)の売上高が鈍化する一方で、ハイブリッド車(HV)と外部からの充電が可能なプライグインハイブリッド車(PHV)の販売が急増している。
ゼネラル・モーターズ(GM)をはじめ多くのメーカーの間では、完全なEVへの切り替えを重視してHV販売を段階的に終了させようとする動きがあったが、消費者のHV需要は逆に拡大。業界幹部やアナリストの話では、この流れは持続的と見込んだ各メーカーやサプライヤーがHVとPHVの増産に向けた設備の増強に乗り出しているという。
モルガン・スタンレーによると、2月の米国におけるHV販売の伸びはEVの5倍に達した。ステランティスは、ジープ部門のスポーツタイプ多目的車(SUV)「ラングラー」の全販売台数に占めるPHVの比率は2023年前半が37%だったが、後半には50%に高まったと明かした。
フォード・モーターの今年1─2月のHV販売台数は37%近く増加し、最低価格2万5315ドル(約380万円)の小型トラック「マーベリック」がけん引。カリフォルニア州のある自動車販売店の幹部は「当店で今最も売れ筋となっているのはマーベリックのハイブリッド車タイプだ」と述べた。
実際マーベリックの販売台数のおよそ半分はハイブリッド車タイプが占めており、各販売店はフォードが増産できるならもっと売れるとみている。
フォードの製品開発担当バイスプレジデント、ジム・ボームビック氏はロイターに「マーベリックの生産能力を急いで拡大しなければならなくなった」と語り、需要に対応するため生産シフトを全面的に2交代制から3交代制に変更したと説明した。
こうした業界のハイブリッド車への傾斜は、エンジン車からの二酸化炭素(CO2)排出量をできるだけ早くゼロにしたいとの観点でEV普及を促進しようとしているバイデン政権にとって逆風だ。
一方11月の米大統領選次第で、バイデン政権が進めてきたEV購入補助金やEV普及のための排ガス基準などが存続しなくなる可能性もある。複数のアナリストは、大半の既存大手メーカーはEV事業で赤字を抱えており、将来の政権が方針を転換すれば、ハイブリッド車がより大きな収益を得ながらCO2削減を目指せる道になり得ると指摘した。
アリックスパートナーズのグローバル自動車プラクティス部門責任者を務めるマーク・ウェークフィールド氏は「ハイブリッド車は、規制の観点からの(EV)推進熱を冷ますような政策転換が起きた場合に備えた重要なヘッジ手段だ」と述べた。