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「話し上手」になるために、まず見直すべきは「相手の話を聞く」姿勢と準備

2022年3月25日(金)11時52分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

話すことを話す きちんと声を上げるために
 キム・ハナ 著
 清水 知佐子 翻訳
 CCCメディアハウス

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■会話のエネルギーバンパイアたち

少し前、何となく知り合いになった人とパーティーの場で一緒になった。その人は自分のことを、うんざりするほどあれこれしゃべり続けた。会社や嫁ぎ先、友人のことなど、私が別に知りたくもないことをひとしきりぶちまけた末に助言を求められたので、私なりに一生懸命悩んで答えたのに、その人はあまり私の答えに集中していなかった。ただ、愚痴を言う相手がほしかっただけのようだった。

私たちは全然親しい間柄ではないにもかかわらずだ。あまりにも一人でしゃべりすぎたと思ったのか、その人はやっと自分の話をやめ、ほかの人に儀礼的な質問を投げかけたのだが、私は、その人がその後に取った行動に目を疑った。

誰かが質問に答えはじめると、それまで自分が話すのに忙しくて食べられなかった料理をせっせと食べはじめたのだ。しかも、しゃべっている相手と一度も目を合わせずに。

私は、その日、あまりにも萎えてしまい、二度とその人には会わないぞと思った。典型的な「エネルギーバンパイア」だった。「エネルギーバンパイア」というのは、精神科医のジュディス・オルロフが造った言葉で、ほかの人のエネルギーを奪って自分にチャージする人のことを指す。

パーティーで会ったその人は、会話を交わしているのではなく、自分のエネルギーをチャージするためにほかの人を利用しているように見えた。そして、私は、「エネルギーバンパイア」たちに無意識にエネルギーを差し出してしまうタイプなので、そういう人たちと適当にうまく付き合うことはとてもできない。

■私の話し方の道具──マインドマップ

今、私の目の前にはA4用紙が一枚、横向きに貼られている。真ん中には「話し方」と書かれ、そこから非定型の線が木の枝みたいにあちこちへと伸びていて、その枝の上には聞くこと、ジム・ホール、声優の勉強、星夜などと書かれている。これは、『話すことを話す』を書くために私が作成した設計図としてのマインドマップだ。

私は二〇一二年からマインドマップを使いはじめ、生活と仕事の全般において活用している。講演の準備、コラムの構想、本の目次を考えるときはもちろんのこと、食材を買いに行くときも、旅行の計画を立てるときもマインドマップを描く。同居人は、考えがまとまらないと、「木の絵を描いて」と私に頼んでくる。マインドマップで考えを整理してみようというわけだ。

マインドマップはイギリスのトニー・ブザンという人が考案した思考の地図作成法だ。テキスト中心の既存の情報記録法の枠から飛び出し、イメージと曲線を積極的に使うツールで、私はマインドマップのおかげで今やっている仕事の多くを効率的にやり遂げることに成功している。あまりにも役に立つので、この強力なツールについてもっと知りたくなり、二〇一七年からはマインドマップのワークショップを開いているほどだ。

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