最新記事

企業倫理

企業が今年注力するべきCSRの4大トレンド

CSR TRENDS IN 2021

2021年3月30日(火)17時00分
スーザン・マクファーソン(マクファーソン・ストラテジーズ創業者兼CEO)

CSRに関することしのトレンドとは…… PM IMAGES-STONE/GETTY IMAGES

<画期的だった2020年の躍進を維持しつつ、多様性や環境、従業員重視、得意分野での貢献を目指せ>

2020年は、CSR(企業の社会的責任)にとって画期的な年となった。米企業と経営者は、これまでになく積極的に行動した。大統領選挙で不正があったという虚偽情報を流した政治家への献金を停止。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で職を失った人々の支援に数億ドルを寄付した。黒人が白人警官に殺され、BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動の一部が暴徒化すると、社会正義実現プログラムの支援にも巨額の資金を拠出した。

だが、ビジネスリーダーがさらに一歩前進し、昨年の約束を実行に移さなければ、せっかくの取り組みも無意味になりかねない。「公表した約束は組織全体の目標と不可分な関係にあることを認識し、リーダーが積極的に進捗状況を確認することがとても重要だ」と、会計大手プライスウォーターハウスクーパーズで「責任あるビジネス」部門を担当するジェフ・セーニは言う。

では、20年の成果を基に21年は何をしなければならないのか。今年のトレンドをご紹介しよう。

◇ ◇ ◇


ダイバーシティー(多様性)に全力投球

20年に始まった人種間の対話をやり抜くには、今年が「決定的に重要な年になる」と、ケーブルテレビ大手コムキャストのデライラ・ウィルソンスコット上級副社長(チーフ・ダイバーシティー・オフィサー)は言う。「人種問題への意識が世界的に高まり、企業は自社の経営方針、慣行、フィランソロピー(社会貢献)、投資行動の査定を迫られた」。今後は結果を出さなければならないと、彼女は付け加える。

保険大手プルデンシャル・ファイナンシャルのラタ・レディ上級副社長(インクルーシブ・ソリューション担当)は、口先だけの約束を消費者に売り付ける企業と「公正さをビジネスの必須条件とする企業の二極化が進む」と予測する。

多様な人材を採用しても、その従業員が成功するための土台がなければ意味がない。経営層の多様性を高め、より多様な消費者のニーズを満たす製品やサービスを開発し、地域社会に投資する企業は、「有言実行」の姿勢を示すことで他社との差別化を図れるはずだ。

新しいダイバーシティーの指標の例としては、カジュアル衣料大手GAPなどの小売企業が採用している「15%の誓約」がある。商品棚の15%を黒人所有の企業に割り当てるというものだ。

グリーン経済は続く

20年はサステナビリティー(持続可能性)に関する取り組みが主流のトレンドになった。「二酸化炭素(CO2)の排出制限をはじめ、規制当局による義務化の流れは、世界中の多国籍企業の経営指標に大きな影響を与えるはずだ」と、大企業のCO2排出量報告を支援する新興企業パーセフォニの上級副社長(チーフ・サステナビリティー・オフィサー)ティム・モーインは言う。

資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンクCEOは今年の年次報告書で、この現象を「地殻変動」と呼び、20年の持続可能な資産への投資は19年に比べて96%増加したと指摘した。

環境問題への取り組みが百八十度変わったように見える企業の一例が、自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)だ。同社は最近まで、カリフォルニア州が新たに導入した厳しい排ガス規制に反対するトランプ前政権を支持していたが、ジョー・バイデン大統領が就任すると、抵抗をやめた。最近では、2035年までにガソリン車の新車販売をやめる計画を発表している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中