企業が今年注力するべきCSRの4大トレンド
CSR TRENDS IN 2021
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CSRに関することしのトレンドとは…… PM IMAGES-STONE/GETTY IMAGES
<画期的だった2020年の躍進を維持しつつ、多様性や環境、従業員重視、得意分野での貢献を目指せ>
2020年は、CSR(企業の社会的責任)にとって画期的な年となった。米企業と経営者は、これまでになく積極的に行動した。大統領選挙で不正があったという虚偽情報を流した政治家への献金を停止。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で職を失った人々の支援に数億ドルを寄付した。黒人が白人警官に殺され、BLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動の一部が暴徒化すると、社会正義実現プログラムの支援にも巨額の資金を拠出した。
だが、ビジネスリーダーがさらに一歩前進し、昨年の約束を実行に移さなければ、せっかくの取り組みも無意味になりかねない。「公表した約束は組織全体の目標と不可分な関係にあることを認識し、リーダーが積極的に進捗状況を確認することがとても重要だ」と、会計大手プライスウォーターハウスクーパーズで「責任あるビジネス」部門を担当するジェフ・セーニは言う。
では、20年の成果を基に21年は何をしなければならないのか。今年のトレンドをご紹介しよう。
ダイバーシティー(多様性)に全力投球
20年に始まった人種間の対話をやり抜くには、今年が「決定的に重要な年になる」と、ケーブルテレビ大手コムキャストのデライラ・ウィルソンスコット上級副社長(チーフ・ダイバーシティー・オフィサー)は言う。「人種問題への意識が世界的に高まり、企業は自社の経営方針、慣行、フィランソロピー(社会貢献)、投資行動の査定を迫られた」。今後は結果を出さなければならないと、彼女は付け加える。
保険大手プルデンシャル・ファイナンシャルのラタ・レディ上級副社長(インクルーシブ・ソリューション担当)は、口先だけの約束を消費者に売り付ける企業と「公正さをビジネスの必須条件とする企業の二極化が進む」と予測する。
多様な人材を採用しても、その従業員が成功するための土台がなければ意味がない。経営層の多様性を高め、より多様な消費者のニーズを満たす製品やサービスを開発し、地域社会に投資する企業は、「有言実行」の姿勢を示すことで他社との差別化を図れるはずだ。
新しいダイバーシティーの指標の例としては、カジュアル衣料大手GAPなどの小売企業が採用している「15%の誓約」がある。商品棚の15%を黒人所有の企業に割り当てるというものだ。
グリーン経済は続く
20年はサステナビリティー(持続可能性)に関する取り組みが主流のトレンドになった。「二酸化炭素(CO2)の排出制限をはじめ、規制当局による義務化の流れは、世界中の多国籍企業の経営指標に大きな影響を与えるはずだ」と、大企業のCO2排出量報告を支援する新興企業パーセフォニの上級副社長(チーフ・サステナビリティー・オフィサー)ティム・モーインは言う。
資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンクCEOは今年の年次報告書で、この現象を「地殻変動」と呼び、20年の持続可能な資産への投資は19年に比べて96%増加したと指摘した。
環境問題への取り組みが百八十度変わったように見える企業の一例が、自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)だ。同社は最近まで、カリフォルニア州が新たに導入した厳しい排ガス規制に反対するトランプ前政権を支持していたが、ジョー・バイデン大統領が就任すると、抵抗をやめた。最近では、2035年までにガソリン車の新車販売をやめる計画を発表している。