アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米DOGEのリストラに矛盾
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2月20日、トランプ米大統領が進める連邦政府のリストラの一環として「仕事ができない」ことを理由に解雇された連邦政府職員が、直前の勤務考課で高評価を受けていたことが、ロイターの取材で明らかになった。写真は11日、ワシントンの米議会で連邦政府職員への支援を訴える労組関係者(2025年 ロイター/Craig Hudson)
Leah Douglas Nathan Layne Tim Reid
[20日 ロイター] - トランプ米大統領が進める連邦政府のリストラの一環として「仕事ができない」ことを理由に解雇された連邦政府職員が、直前の勤務考課で高評価を受けていたことが、ロイターの取材で明らかになった。
この矛盾は、トランプ氏が実業家イーロン・マスク氏をトップに起用した「政府効率化省(DOGE)」が主に試用期間中だった数千人の政府職員を解雇した法的根拠に問題がある可能性を示唆している。
ロイターが話を聞いたのは7つの政府機関から先週解雇された12人の元職員で、いずれも受け取った解雇通知には仕事ぶりがその理由として記されていた。
ある通知には「当省はあなたの勤務パフォーマンスに基づき、あなたを引き続き雇用することが公共の利益に資すると証明されないと判断している」との説明があった。
ホワイトハウスは、一連の解雇は政府をより効率化する目的で実施されたと述べたが、なぜ仕事が評価された職員が解雇されたのかとの質問には回答していない。
アナ・ケリー報道官は「トランプ大統領と彼の政権は、無駄な支出を省き、連邦機関をもっと効率的にしてほしいという国民の負託に依拠して政策を行っており、その中には重要な業務に従事していない試用期間中の職員解雇が含まれる」とコメントした。
一方、12人の元職員がロイターに明かしたところでは、彼らの解雇前の数週間ないし数カ月の勤務評価は高く、中には成果に対する特別な賞与や報償を得た人もいた。
ロイターは元職員から直近の勤務評価内容を見せてもらったほか、彼らの元上司にも取材をして事実を確認している。
農務省森林局でアイダホ州の河川管理をしていた23歳のパトリック・シェイさんは「私がこのような措置(解雇)を受けるとは全く思っていなかった」と語る。
シェイさんは昨年12月15日に昇進し、上司からは際立って優れた仕事ぶりを賞賛されたことが、勤務評価内容から分かっている。
雇用問題に詳しい弁護士で政府職員の代理人を務めるドン・クイン氏は、通常は雇用保障が非常に限定的な試用期間中の職員を解雇する際に、仕事ができない点を理由とする法的な根拠は見当たらないと主張。トランプ政権はパフォーマンスを隠れ蓑にしようとしているものの、逆に解雇の不当性が追及されれかねないと指摘した。
<異議申し立てへ>
ロイターが取材した12人のうち5人は、農務省森林局の元職員。ターニャ・トーストさんはパートナーシップ・コーディネーターで、先週解雇された時点では2年の試用期間が終わる寸前だった。
トーストさんも勤務評価は良好で報奨金は5回受け取り、2回昇給している。その1回が昨年12月で、カリフォルニア州の6カ所の森林管理のために外部からの資金調達に寄与したことが評価された。
農務省では天然資源保全局や経済調査局で勤務評価が良かったにもかかわらず解雇された職員にも話を聞くことができた。
また食品医薬品局(FDA)でたばこの安全性を調査していたマットさんも、昨年12月末までの評価機関で最高評価を得ていたが、解雇されている。
農務省とFDAはコメント要請に回答がなかった。
多くの元職員は解雇処分を不服として、メリットシステム保護委員会(MSPB)に異議申し立てを行う方針。トランプ氏は、民主党に属するMSPB委員長の更迭を試みたが、連邦裁判所が18日に差し止める命令を下した。