東京五輪「コロナ延期で莫大な経済損失」は本当なのか
OLYMPIC DREAM STILL ALIVE
例えば12年ロンドン大会では、開催期間中の7〜8月の訪英人数はわずかに減少している。これは、交通費や宿泊代の高騰によって、五輪以外の目的でイギリスを訪れる人が減った可能性を示唆している。
20年に開催予定だった五輪でも、日本発着便や首都圏のホテル料金高騰を嫌い、東京あるいは日本への旅行・出張を控える動きが相当程度あったとみられる。似たような事例が実際に起きたのはラグビー・ワールドカップでにぎわっていた19年10月である。多くの観戦客が訪れる一方、アジア圏の人々やビジネス客が訪日を手控えたとみられ、訪日客の全体数は減少した。同様に、日本全体で20年に発現するはずだった観光需要は大きくなかった可能性がある。
このように、建設関連投資や観光需要を通じた五輪の経済効果はメディアで大々的に伝えられているほど大きくない。「特需」と呼べるほどのものはなく、延期で吹き飛ぶ部分はそもそも小さいのだ。
<2020年4月14日号「ルポ五輪延期」特集より>
2020年4月14日号(4月7日発売)は「ルポ五輪延期」特集。IOC、日本政府、東京都の「権謀術数と打算」を追う。PLUS 陸上サニブラウンの本音/デーブ・スペクター五輪斬り/「五輪特需景気」消滅?