最新記事

五輪ビジネス

東京五輪延期、スポンサー80社が契約対応に苦慮 追加費用に懸念も

2020年3月27日(金)17時14分

今年7月から開催するはずだった東京オリンピック・パラリンピック大会(東京五輪)が「1年程度」の延期という異例の展開となり、スポンサー企業の多くが契約への対応に苦慮している。写真はお台場で、25日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato

今年7月から開催するはずだった東京オリンピック・パラリンピック大会(東京五輪)が「1年程度」の延期という異例の展開となり、スポンサー企業の多くが契約への対応に苦慮している。新型コロナウイルスがパンデミック(世界的な大流行)化する中、大会中止を回避できたことには安どの声があるものの、感染拡大で本業が打撃を受けている企業も多く、追加の費用負担は厳しいとして契約延長に不安も広がっている。

「追加費用、支払うつもりない」

「追加費用を請求されたとしても、支払うつもりはない」――。あるスポンサー企業の関係者はこう強調する。同社は東京五輪開催時の特需を取り込むため、すでに多額の費用を投じてキャンペーンや戦略を打ってきただけに、大会が延期されたからと言ってスポンサーを降りるわけにはいかない。しかし、新型コロナ感染拡大で本業はすでに大きな痛手を負っており、追加費用を負担する余力はないという。

大会組織委員会(組織委)やスポンサー企業関係者らによれば、スポンサー契約の内容や期間などは各社さまざまだが、複数の国内スポンサー企業が今年末に契約期限を迎える。大会延期で契約期間の延長や契約更新、追加の協賛金支払いなどが必要となる見通しで、各社は組織委などと個別に交渉することになる。

延期に伴う追加費用は、会場や宿泊先の再確保、組織委のオフィス賃料など「総額で数千億円規模」(組織委関係者)と試算されている。しかし、誰がどのように負担するのかまだ不明だ。開催都市の東京都、国、組織委もすでに予算をほほ使い切っているため、スポンサー関係者の間では「追加費用を迫られる」との懸念が強い。

スポンサー契約継続に慎重な声も

五輪のスポンサーには4種類ある。国際オリンピック委員会(IOC)と直接の契約を結んでいる最高位パートナーの「ワールドワイドオリンピックパートナー」にはトヨタ自動車など国内外14社が名を連ねており、東京五輪後もスポンサーを続ける。

このほか、東京五輪のみを対象にした国内スポンサーとして「ゴールドパートナー」、「オフィシャルパートナー」、「オフィシャルサポーター」があり、最高位パートナーと合わせ、80社近くが契約を結んでいる。

オフィシャルパートナーである東京ガスの内田高史社長は25日の会見で、現状を考えれば延期は妥当な措置としつつも、スポンサー契約については「もし継続するなら、追加でどれくらい支払わなければならないかなどを伺ってから検討したい。今の時点では明確な答えはない」と明言を避けた。

別のスポンサー企業の関係者は、今の契約に「変更が必要か、現状のままでいけるのか、どこまで今の契約でカバーされるのか、すべて調整が必要だ」と指摘。「当社は契約を延長すると思うが、追加費用が発生するので、一部のスポンサーは止めてしまうところもあるかもしれない」とも話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シリア衝突、死者1000人超え 「責任追及」と暫定

ビジネス

今年の第4四半期米GDP予測、1.5%へ引き下げ=

ワールド

米商務長官、インドに関税引き下げ要求

ワールド

ルビオ米国務長官、10─12日にサウジ訪問 ウクラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望的な瞬間、乗客が撮影していた映像が話題
  • 3
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 6
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    中国経済に大きな打撃...1-2月の輸出が大幅に減速 …
  • 9
    鳥類の肺に高濃度のマイクロプラスチック検出...ヒト…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中