東京五輪延期、スポンサー80社が契約対応に苦慮 追加費用に懸念も
「また、始めからやり直すのか」
「社内は延期に『がっくり』という感じだ」――。あるスポンサー企業の関係者は「節目節目でイベントも開催し、マーケティングのキャンペーンもやっており、すでにかなりの資金を費やしている。すべて無駄になるわけではないが、来年も同じことを最初からやり直すのか」とため息まじりに語る。
同関係者はまた、今回は「五輪の延期・中止リスクが顕在化し、五輪にからむ意思決定に関しても、いろいろな人の権利が複雑にからんで融通が利かないことが証明された」と振り返り、「将来はスポンサーになろうとする企業は慎重になるのではないか」とみている。
米ファストフード大手マクドナルドは17年にリストラを進めた際、長期の五輪スポンサー契約を解約している。五輪スポンサー大手の法務を担当する法律事務所デイビス&ギルバートの幹部は「一部のスポンサーが契約を全面的に解約するということは可能性として大いにある」と述べた。
もっとも、スポンサー企業の多くが「1年延期」と一定の方向性がようやく見えたことには安どしている。スポンサー企業である航空会社の関係者は「感染拡大防止で世界各国が入国・出国制限を実施する中、無理に開催しても乗客がいなければ意味がない」と指摘。「1年延期でもコロナが終息しているかは不明だが、年内開催よりは1年先のほうがリスクは低い。仕切り直してもらったことはありがたい」と話す。
ゴールドパートナーであるアサヒビールの塩澤賢一社長も25日、1年延期を前向きに受け止め、日本全体が大会に向けて盛り上がっていけるよう、「延期される時間を有効活用し、さらなる盛り上げ策を展開していきたい」とコメントしている。
(白木真紀 取材協力:安藤律子、梅川崇、大林由香、田実直美、新田裕貴、山崎牧子、David Dolan、Kevin Buckland、Sam Nussey 編集:北松克朗)
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